第1話 金に困ってる系 商人

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ヒュドラが町に!?緊急事態じゃない!! 「街に突っ込んでくるなんて、よっぽどストレスたまってんのか?」 「ぬぁに、呑気な事を言ってるのよ!急いで避難しましょう!」 辺りが騒然とする中、あっけらかんとしているショウコの手を引き、非常口へと向かう。 非常口から外に出ると、既に町に入り込んだヒュドラと冒険者達が戦闘を開始していた。 あれがヒュドラ・・・九つの頭を持った巨大水蛇、吐く息は猛毒、紫の身体と首は高い再生能力を持っていて生半可な攻撃だと切ったそばから、新たな首が生えてくる・・・らしい。 次々と冒険者達が倒れていく・・・パツキーンも応戦しているが、致命傷を与えられず苦戦している。 「クソ!!剣じゃ威力不足で、まともにダメージ与えられねぇ!ヘヴィアックスさえあれば!」 パツキーンの声が聞えたらしく、ショウコがヘヴィアックスを持って歩き出す。 「まさか、武器を渡しに行く気!?危ないわよ!」 「それもそうだな。投げて渡すか」 ショウコはおもむろにヘヴィアックスを片手で持ち、振りかぶって・・・投げた! 回転しながら勢い良く飛んでいき・・・ヒュドラの首を一本斬り飛ばして、地面に突き刺さった。 「え!?」 私だけじゃなく、近くに居た人達は勿論、パツキーンも首を一本失ったヒュドラも驚いている様子だ。 「おーい お代は後で良いから、それでやっつけとくれ~」 「お、おぅ」 パツキーンはヘヴィアックスを両手で掴み、少しよろけた後、構えを取る。 「これなら、首を叩き斬れるぜ!」 そう言いながら、ヘヴィアックスを振り回すパツキーンだが・・・全然、当たらない。 ヒュドラ、あんな体でかいのに余裕でかわしてるし! 「あぁ、ありゃダメだな。全然、使いこなせて無いわ。アイツ、てんで見かけ倒しだな~ 冒険者ギルドのランク認定も地に落ちたもんだ」 そう言った後、眠そうに欠伸をするショウコの緊張感の無さに私は呆れていた。 「なに、余裕ぶっこいてんのよ!このままじゃ、※騎士団来るより先に店が潰されるわよ!?」 ※警察的な組織。 「え、マジで?やばい、やばいよ!バイト代入らないとアパート追い出される!!野宿はイヤー!!蚊に刺されるぅー!私の崇高な血がぁぁぁ!」 目を見開いて叫びながら、ショウコは反り返って頭を抱えている。 何よ、崇高って?いっそ吸い付くされてしまえば良いのに。 そんな事を思っている最中・・・ショウコは軽く溜め息を吐いた後、ヒュドラの方へと駆け出した。 「ちょっと、ショウコさん!?」 「バイト代入らないと困るから、どうにかしてくるわ~」 そう言って、振り向いたショウコの右耳のピアスが日の光に当たり虹色の光を放った。 眩しい・・・何、あのピアス? 冒険者のピアスと同じデザインだったけど、虹色のピアスなんて聞いた事が無い・・・ただのファッションピアスかしら? ショウコはヒュドラの頭突きで倒れているパツキーンの前に立ち、地面に落ちているヘヴィアックスを片手で軽々と持ち上げた。 「借りるぞ、これ」 「な、何なんだお前!?それは両手武器だぞ・・・片手で持ったり投擲できる代物じゃないだろ!」 パツキーンを見下ろしながら、ショウコは出会った時と同じように得意気な顔で笑みを浮かべる。 「私か?私は・・・商人だ!金に困ってる系のな!」 いや、ドヤ顔で言う台詞じゃないし。 「さて・・・お前、邪魔。どっか行ってろ」 「邪魔って、俺様はゴールド級の冒険者・・・ぐはぁ!?」 ショウコはサッカーボールを蹴るように、パツキーンを店まで蹴り飛ばした。 いや、キック力おかしいだろ・・・何者なの、アイツ!? 「さぁ~て・・・邪魔者もいなくなったし、心置き無く暴れさせてもらおうか!」 「キシャアアアアア!!」 ヒュドラは威嚇の声をあげ、残る八本の頭でショウコに襲いかかる! 普通なら、あの威圧感に圧倒されて縮こまりそうなモノだけど・・・ショウコは怯む事なく素早い動きで攻撃を躱しながら、ヘヴィアックスで次々とヒュドラの首をはね飛ばしていく! 「キシャアアアアア!?」 あっという間に、残る頭は三本になってしまった。 「な、何なんだあのパート!?履歴書には成り立てピチピチ美形商人としか書いてなかったのに!」 チーフが冷や汗を浮かべながら、戸惑っている。 履歴書にふざけた内容を書き込むのはどうかと思うし、良くそんなんで採用したな?と、ツッコミたかったが私は黙ってショウコを見守る事にした。 とは言え、もう勝ったも同然だろう。 きっと、ショウコは戦士系のジョブから転職した商人に違いない。 じゃなきゃ、ヘヴィアックスなんてパツキーンのような現役戦士ですら、もて余す武器を使いこなせる訳が無い。 だから、自己紹介の時にパワー系とか抜かしてたんだわ。 勝ち確定と思い、安心して見ていた私は・・・次にヒュドラがとった行動に危機感を覚えた。 ヒュドラが口を大きく開け、紫色の煙を吐き出したからだ。 「あれは、猛毒の吐息(ポイズン・ブレス)!?」
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