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第2話 自然に優しい系 商人
ショウコ、大丈夫かな?常に偉そうな態度してるけど、実はメンタル雑魚だし・・・きっと落ち込んでるに違いない!
ス魔ホを手に取り、ショウコに連絡する。
「もしもし、ショウコ?」
「んあ~エマ・・・また、クビになった私みたいなゴミクズカスに何か御用でしょうか?」
すっかり卑屈になってる・・・何とかしなくちゃ!
「会いに行って良い?アパートの場所、教えて!」
ショウコの住むアパートの地図画像を転送してもらい、急いで向かう。
ここがショウコのアパート『めぞん漆黒』か・・・なんだな、お化け屋敷みたいに陰気でボロいわね。
それはともかく、ショウコに会わなきゃ!
202号室のチャイムを鳴らすと「開いてるよ~」と、気の抜けたショウコの声が聞こえてきた。
「お邪魔します・・・って、あんた何を呑気にゲームしてるのよ!?」
白地に不死鳥と書かれたTシャツに黒いスウェットパンツ姿であぐらをかき、テレビゲームをしているショウコの後ろ姿を見て、思わずツッコミを入れてしまった。
「いらっしゃい~ ニートの基本はゲームなんだよ!」
ショウコがやってるゲーム・・・かなりレトロな格闘ゲームだ。
確か『お茶りーとふぁいたー弐』だったかな?
「食らえ、地獄脚払い!地獄脚払い!!地獄脚払いぃぃぃぃぃぃぃ!!」
弱、中、強のパンチとキックで攻撃したり、コマンド入力で技を出して一対一で戦うゲームだけど、ショウコはひたすら弱キックを連打している。
なんて言うか・・・想像以上に病んでるな。
それにしても狭くて薄暗い部屋。※ワンルームってやつかしら?布団も敷きっぱなしだし、だらしないわね。
※室内にドアなどの仕切りがなく、居室とキッチンが繋がっている。建設コストが低いので家賃が安い。
でも、思ったより散らかっては無い・・・と、言うか生活用品少なく無い?
部屋の様子を伺っていると、ショウコはゲーム画面を見つめ、私に背を向けたまま話しかけてきた。
「なぁ、エマ・・・なんで私、武器をダメにしたとか、客に失礼な事したとか、便所のネズミのクソにも匹敵するくだらない理由でクビになったんだ?皆を助けたのに!!」
何だか、独特な言い回しだし台詞っぽい。きっと漫画やらゲームからパクってるな。
それはともかく、ショウコの肩、震えてる・・・そうよね。正しい事をしたのに不当な待遇を受ければ悔しいのは当然だ。
「私は・・・ショウコがした事、間違って無いと思うよ!あんなヒドイ店、私も辞めてきちゃった!」
ショウコはゲームのコントローラーから手を離し、私の方を振り向いて不安そうな顔を見せた。
「エマ・・・辞めてきたのか?」
「うん。あんな店で働いてたら、私の品位が落ちるもの」
「じゃあ、誰が私にアパート代を貸してくれるんだよー!!辞めんじゃねぇよ!どうすんだよ!」
何なの、コイツ・・・最低なんですけど!?
「私のバイト代を頼りにしてたの?便所のネズミのクソにも匹敵するくだらない考えをしてるのは、お前の方だろ!」
「ぐはぁ!?」
私の言葉が余程堪えたのか、ショウコはその場に倒れ込んだ。
「チキショ~容赦無くガラスのマイハートに罵倒の石を投げつけやがって・・・私の心はひび割れたビー玉だよ!!破片が胸へと突き刺さって出血多量でゲームオーヴァーだよ!!」
やけにGame Overの発音が良いのが癪に触る。
「それより、アパート代っていつまでに払えば良いのよ?」
「三日後だよ・・・全然足りねぇよ。ヤバいんだって、マジで!野宿は嫌だぁー!蚊に刺されたくないよー!!」
余程、蚊に刺されたくないのか・・・発狂したように顔を左右に振り続けるショウコの姿は、ちょっとしたホラー映画のワンシーンを彷彿とさせる。
「テンパってんなぁ~ てか、バイトをクビになりっぱなしの分際で良くアパート借りる金があったわね?貯金とかあるんじゃないの?」
「そんなもん、無い!」
「また、ドヤ顔で言うとこじゃ無いし・・・じゃあ、どうやって工面したのよ?」
「それは・・・商人らしく、アイテム集めて売ったんだよ」
この世界は、基本的に物の売り買いは商人を通して行われる。
つまり、魔法使いが魔法使いに本を売ったりするのはタブーで、魔法使いが商人に本を売ったり、商人が魔法使いに本を売るのOKなのだ。
ただし、商人に雇われている人間は店内でのみ代理として販売する事が可能である。
「じゃあ、今回もそうすれば良いじゃない。商人らしく」
「簡単に言ってくれるなよ。アイテム集めは街から出て、魔獣がいる山やら谷やらに行かなきゃならないんだぞ?回復アイテムだって必要になるし」
「なら、私も手伝うよ。回復魔法も使えるし」
「ん?エマ、回復魔法も使えるのか?なら、だいぶ出費は抑えられそうだけど・・・丸一日は探索するから、親御さんが心配するだろ」
「あ~ 大丈夫、大丈夫!ウチ、放任主義だから。泊まりもOKだよ」
ショウコは一瞬、何か言いいたげに口を開いたが・・・「フン」と鼻息を鳴らして口を閉じ、笑顔を見せた。
「なら、手伝ってもらおうかな!」
「そうこなくっちゃ!ガッツリ稼いで、店の連中を見返してやりましょう!」
こうして私達は装備を整え、金になりそうなアイテムを探しに街を出ることになった。
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