第2話 自然に優しい系 商人

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ショウコは豪快に真っ正面からサイベアーに攻撃を仕掛ける! サイベアーの鋭い爪の一撃と、ショウコの棍棒がぶつかり合い火花を散らした。 「ウガッ!?」 なんと、サイベアーの爪方が欠けた! 「フッ、流石はダンガリウム鉱石の棍棒だ。お前の爪より硬いらしいぞ?」 「ウガァァァァァァァ!!」 挑発に乗って、サイベアーは力任せにショウコを攻撃し始めた。 良し、隙だらけだ! 「水の精霊よ、力を貸して!」 さっき巨大蚊をやっつけた水圧砲をサイベアー目掛けて撃ち放つ! お腹に命中したけど・・・一瞬、動きが止まっただけで全然効いて無い!! 「エマ、狙いを額に定めてくれ!」 「わ、わかったわ!」 魔石を破壊すれば、正気に戻る・・・でも、正気に戻っても私達を攻撃してくるんじゃ!? とは言え、今はショウコを信じて魔石を狙うしか無い・・・プレッシャーで押し潰されそうだけど、私はそんなにヤワじゃないんだから! ショウコは怪我をしてる・・・大丈夫とは言ってたけど、そんなに長くは持たないだろう。 次のチャンスで、魔石を破壊する! ショウコはサイベアーの攻撃を受け続けているけど、少しずつ押されてる・・・落ち着け、好機は必ず来る! 「っらぁ!」 ショウコが棍棒をかち上げると、サイベアーの両腕が跳ね上がった! 今だ! 「水の精霊よ、力を貸して!」 水圧砲が、サイベアーの額に命中した! けれど、魔石は僅かに欠けただけでサイベアーは正気に戻らなかった。 「嘘・・・無理なの?私の魔法威力じゃ、足りないんだ・・・やっぱり・・・私・・・」 「諦めるな、エマ!次で壊せるかも知れないだろ!トライ、アヴェインだ!」 発音微妙・・・でも、折れかけた気持ちは何とか持ち直せた。 とは言え、次で壊せる保証は無い・・・私は魔力量も魔法威力も人並みしか無い。 無才の私に残された魔力で撃てるのは、あと一発・・・欠けた部分にピンポイントで当てるしか無い。 不安に押し潰されそうな私の元に、カーバンクルが駆け寄って「ぴぃー!」と鳴いた。 そして、抱っこをせがむようにピョンピョン跳ねる。 「こんな時に、なつかないでよ!」 「ぴぃー!」 あれ?カーバンクルの角・・・赤く光ってる? そういえば、さっきショウコがカーバンクルの角は魔法ブースト系のアイテムの原料になるって言ってた! 「あなた、私の魔法をパワーアップさせられるの?」 「ぴぃ、ぴぃー!」 言葉は分からないけど、きっとYESだ! カーバンクルを片腕で抱き上げると、魔力が高まるのを感じた。 「あなたも主の正気を取り戻したいのね?なら、一緒にぶちかましましょう!!」 カーバンクルの温もりが、魔力だけじゃなく私に勇気をくれたような気がする。 今度こそ、あの魔石を破壊する! 「っだらぁ!!」 ショウコの渾身の一撃が顎を捉え、サイベアーがよろめいた! 「今度こそ、決める!」 「ぴぃー!!」 水圧砲は、普段の何倍もの勢いで放出された! けど、威力に負けて狙いが僅かに逸れてしまった! 「曲がれぇぇぇぇぇ!!」 無我夢中で叫ぶと、ほんの少し水圧砲の軌道が変化し・・・サイベアーの額で禍々しい赤紫の光を放つ魔石を粉砕した! 「や、やったぁー!」 「ぴぃー!」 カーバンクルを抱き締め、私は喜びのジャンプをした。 が、魔力が底をついて倒れてしまった。 「いたたたた・・・」 顔をあげると、ショウコが手を差しのべていた。 「立てるか?」 「ちょっと無理だから、甘えるわ」 ショウコに引っ張り上げてもらい、サイベアーを見ると・・・カーバンクルと何やら話をしているように見受けられた。 さっきまで血走った目をしていたけど、うってかわって穏やかな目をしている。 「ガウッ、ガウ」 「ぴぃー!」 二匹は、私達に向かって何か言ってるようだけど・・・流石に分からないな。 「お礼、言ってるのかな?」 「さあな。とは言え、主はまだまだピンピンしてるし、カーバンクルの角は諦めるしか無いかぁ」 カーバンクルとサイベアーは顔を見合せ・・・突然、互いの角をぶつけ合った! カーバンクルの宝石みたいにキラキラ輝く角と、サイベアーの白く立派な角が折れ、地面に落ちた。 そして、二匹は森の奥へと消えていった。 「・・・私達は、魔獣の言葉は分からないけど魔獣達は分かるのかな?」 「さぁな!でも、きっとそうなんだろうな・・・さて、一休みしたら山を降りてアイツらをブチのめさなきゃな!」 「大丈夫よ。私達が手を下さなくても、証拠はあるから。騎士団に任せましょう」 そう言いながら、私はショウコにス魔ホに録音した音声を聞かせた。 「すご、学校卒業したら探偵にでもなれば良いんじゃないか?」 「え~?こんな可愛い探偵いたら、依頼が殺到して困っちゃうよ~」 「自分で言うか、それ?」 「ショウコだって自分の事を美形とか美人って言ってたじゃない!」 「本当の事だから良いんだよ」 「それ、遠回しに私が可愛く無いって言ってるの?」 膨れっ面をする私を見て、ショウコは苦笑いを浮かべた。 「はいはい、エマは可愛いって!」 いつの間にか、すっかり日が沈み・・・木々の隙間から月の光が射し込み、まだ地面に落ちたままの二本の角をキラキラと輝かせた。
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