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ショウコは豪快に真っ正面からサイベアーに攻撃を仕掛ける!
サイベアーの鋭い爪の一撃と、ショウコの棍棒がぶつかり合い火花を散らした。
「ウガッ!?」
なんと、サイベアーの爪方が欠けた!
「フッ、流石はダンガリウム鉱石の棍棒だ。お前の爪より硬いらしいぞ?」
「ウガァァァァァァァ!!」
挑発に乗って、サイベアーは力任せにショウコを攻撃し始めた。
良し、隙だらけだ!
「水の精霊よ、力を貸して!」
さっき巨大蚊をやっつけた水圧砲をサイベアー目掛けて撃ち放つ!
お腹に命中したけど・・・一瞬、動きが止まっただけで全然効いて無い!!
「エマ、狙いを額に定めてくれ!」
「わ、わかったわ!」
魔石を破壊すれば、正気に戻る・・・でも、正気に戻っても私達を攻撃してくるんじゃ!?
とは言え、今はショウコを信じて魔石を狙うしか無い・・・プレッシャーで押し潰されそうだけど、私はそんなにヤワじゃないんだから!
ショウコは怪我をしてる・・・大丈夫とは言ってたけど、そんなに長くは持たないだろう。
次のチャンスで、魔石を破壊する!
ショウコはサイベアーの攻撃を受け続けているけど、少しずつ押されてる・・・落ち着け、好機は必ず来る!
「っらぁ!」
ショウコが棍棒をかち上げると、サイベアーの両腕が跳ね上がった!
今だ!
「水の精霊よ、力を貸して!」
水圧砲が、サイベアーの額に命中した!
けれど、魔石は僅かに欠けただけでサイベアーは正気に戻らなかった。
「嘘・・・無理なの?私の魔法威力じゃ、足りないんだ・・・やっぱり・・・私・・・」
「諦めるな、エマ!次で壊せるかも知れないだろ!トライ、アヴェインだ!」
発音微妙・・・でも、折れかけた気持ちは何とか持ち直せた。
とは言え、次で壊せる保証は無い・・・私は魔力量も魔法威力も人並みしか無い。
無才の私に残された魔力で撃てるのは、あと一発・・・欠けた部分にピンポイントで当てるしか無い。
不安に押し潰されそうな私の元に、カーバンクルが駆け寄って「ぴぃー!」と鳴いた。
そして、抱っこをせがむようにピョンピョン跳ねる。
「こんな時に、なつかないでよ!」
「ぴぃー!」
あれ?カーバンクルの角・・・赤く光ってる?
そういえば、さっきショウコがカーバンクルの角は魔法ブースト系のアイテムの原料になるって言ってた!
「あなた、私の魔法をパワーアップさせられるの?」
「ぴぃ、ぴぃー!」
言葉は分からないけど、きっとYESだ!
カーバンクルを片腕で抱き上げると、魔力が高まるのを感じた。
「あなたも主の正気を取り戻したいのね?なら、一緒にぶちかましましょう!!」
カーバンクルの温もりが、魔力だけじゃなく私に勇気をくれたような気がする。
今度こそ、あの魔石を破壊する!
「っだらぁ!!」
ショウコの渾身の一撃が顎を捉え、サイベアーがよろめいた!
「今度こそ、決める!」
「ぴぃー!!」
水圧砲は、普段の何倍もの勢いで放出された!
けど、威力に負けて狙いが僅かに逸れてしまった!
「曲がれぇぇぇぇぇ!!」
無我夢中で叫ぶと、ほんの少し水圧砲の軌道が変化し・・・サイベアーの額で禍々しい赤紫の光を放つ魔石を粉砕した!
「や、やったぁー!」
「ぴぃー!」
カーバンクルを抱き締め、私は喜びのジャンプをした。
が、魔力が底をついて倒れてしまった。
「いたたたた・・・」
顔をあげると、ショウコが手を差しのべていた。
「立てるか?」
「ちょっと無理だから、甘えるわ」
ショウコに引っ張り上げてもらい、サイベアーを見ると・・・カーバンクルと何やら話をしているように見受けられた。
さっきまで血走った目をしていたけど、うってかわって穏やかな目をしている。
「ガウッ、ガウ」
「ぴぃー!」
二匹は、私達に向かって何か言ってるようだけど・・・流石に分からないな。
「お礼、言ってるのかな?」
「さあな。とは言え、主はまだまだピンピンしてるし、カーバンクルの角は諦めるしか無いかぁ」
カーバンクルとサイベアーは顔を見合せ・・・突然、互いの角をぶつけ合った!
カーバンクルの宝石みたいにキラキラ輝く角と、サイベアーの白く立派な角が折れ、地面に落ちた。
そして、二匹は森の奥へと消えていった。
「・・・私達は、魔獣の言葉は分からないけど魔獣達は分かるのかな?」
「さぁな!でも、きっとそうなんだろうな・・・さて、一休みしたら山を降りてアイツらをブチのめさなきゃな!」
「大丈夫よ。私達が手を下さなくても、証拠はあるから。騎士団に任せましょう」
そう言いながら、私はショウコにス魔ホに録音した音声を聞かせた。
「すご、学校卒業したら探偵にでもなれば良いんじゃないか?」
「え~?こんな可愛い探偵いたら、依頼が殺到して困っちゃうよ~」
「自分で言うか、それ?」
「ショウコだって自分の事を美形とか美人って言ってたじゃない!」
「本当の事だから良いんだよ」
「それ、遠回しに私が可愛く無いって言ってるの?」
膨れっ面をする私を見て、ショウコは苦笑いを浮かべた。
「はいはい、エマは可愛いって!」
いつの間にか、すっかり日が沈み・・・木々の隙間から月の光が射し込み、まだ地面に落ちたままの二本の角をキラキラと輝かせた。
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