その1

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その1

「人生ってこんなに退屈なんだな」 「あ? たかだか16年しか生きてないくせに何言ってんだ」 友人にそうつっこまれた。 まぁ確かにたかだか16年しか生きてないでそんなことを言う俺は生意気なんだろうが。 「お前くらい容姿も整っててモテるし成績もそこそこ良くて周りとも上手くやっててそんなふざけたことぬかすなんて嫌味にしか聞こえねぇぞ」 「ははッ、別にそんなつもりで言ったわけじゃないし。 けどさ、お前が言ったこと俺が望んでそうなったわけじゃないのは本当だし」 「よー言うわ、ますます嫌味にしか聞こえねぇっての! それに妙にストイックなとこもあるし… 持ってる奴は言うことが違いますなぁ、イヤな幼馴染ですこと!」 友人が言ったように俺は恵まれている方なんだろう、それはそれで良い思いもしてきてた気がするしそれが嫌なんてこともなかったけど最近では言い表せない何か虚無感のようなものが俺を障んでいた。 「ぶあッ!」 「んだよてめぇ! きったねぇ、てめぇの涎がついちまったじゃねぇか!」 「ご、ごめん」 「近寄んな! キモいんだよッ」 罵声の方に目をやると何度か見た光景がそこにあった。 見た目がキモい、性格もキモい、行動もキモい、とにかくキモいと言われている、ええと…… 確か田沼 誠司。  「まぁーたやってるぜあいつら、自分から殴り掛かっておいて汚ぇとか近寄んなって。 よくやるわ」 「いつも思うけど誰も助けに行かないよな」 「いやだって田沼だぜ? それにお前こそ助けに行かねぇじゃん」 特に興味がなかった、それだけのことだ。 こんな風に考えてしまう俺は腐ってるのかな?  まぁいいや、と確かにスルーしてしまうこの光景も魔が差したと言えばいいのだろうか? 暇潰し? とにかく俺は田沼を助けようと思った。 「お、有言実行するつもりか? あんなのに関わるのやめとけって、お前の評判落ちっかもよ」 「…… 落ちたら面白くなるかな?」 「変な奴」 「まぁ気分だよ、気分」 俺は教室から出て行き田沼を虐めていた3人の前に立つ。 前田、葦頼、飯塚だ。 このトリオはいつもつるんでいる。 俺が目の前に来たもんだから何事だ? と怪訝な視線をこちらに向ける。 何故だか後ろに居る田沼から刺すような視線を感じる。 助けてやるかって思ったのに。 「西澤、何だよ? お前も嵌りたいのか?」 前田が威圧的に言うがハッキリ言ってなんてことない。 「お前らと一緒にすんな、くだらねぇことやめろって言いたいんだわ俺は」 「はあ?! てめぇちょっと持て囃されてるからって俺らに文句つけようってか? 調子に乗んじゃねぇぞ!!」 あーあ、殴る気だわこいつ。 でも助けに入ったからにはちゃんと助けないとな。 前田が拳を振り上げたと同時に俺は前田を蹴飛ばし前田は尻餅をついた、すかさず俺は再度蹴飛ばして完全に倒れた前田に拳を振り落とす。 「ひッ!」 前田は顔を腕で覆うが俺の拳が届かないので腕をよけ俺を見る。 「な? 殴られるって思うと怖いだろ」 「…… ちッ、クソが!!」 勝てないと思ったのか俺を手で突き飛ばして3人は行ってしまった。 俺は「ふう」と息を吐いて田沼に振り向くが…… 「かっこいい! ねぇ西澤君って喧嘩も強いんだ」 「ねぇー、前田ったらめっちゃビビッてたじゃん」 ひと嵐過ぎて女子が纏わりつく。 あー、こいつらにこそ鉄拳くらわしてやりたい。 「大丈夫か田沼?」 俺は女子達を避けて田沼に話し掛けると田沼に睨まれる。 「ふーん、こういう演出なんだ」 「え?」 助けたはずの田沼が言った。 「どけよ偽善者ッ!」 「うおっと……」 「最低!! 助けてあげた西澤君突き飛ばすなんて!」 「だからいじめられるんだよ、クソ田沼!」 俺を突き飛ばして田沼は去っていった。  まさかあんな態度を取られるとは…… まぁ今まで見て見ぬふりしてた奴がいきなり助けに入るなんて演出と見なされても仕方ないのかもしれないが。 ◇◇◇ 「くそッ! どいつもこいつも俺のことコケにしやがって!!」 許せない、今更正義の味方ヅラして助けやがって。 普通の奴だったらここまではならない、よりにもよって西澤だから。 人を見下したような目をしやがって! 既にいろいろ良い思いしてるってのにまだ足りないのか? どこまで貪欲な奴なんだ…… そうだ、あれを試してみたら? バカらしいけど心の隅に収めていた知識、闇サイトに載っていた心と身体を入れ替える黒魔術。  くくく、西澤も許せないが俺は学校の奴ら全員許せない。 西澤、お前の身体を俺が貰ってやる。
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