Chapter 3 彼との出逢い

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   彼女はAIとしてまだ生まれたばかりだった。  VRゴーグルを起動する事で、所持者のパートーナーとなる。  彼は別にビギナープレイヤーでは無かったが、以前使用していたVRゴーグルが壊れたのを機に、を手にした。  そして、新しく開放されたエリア、で、コードナンバー168番をゲーム内へ召喚した。  ローンチされたばかりの彼女は、他のAIと同様基本的な会話をプログラムされていた。そこからプレイヤーとの質問の形式を繰り返す事で、学習し、成長して行く。  しかし、大抵のプレイヤーはいちアバターの彼女達に興味を示さない。  所詮、受け答えがロボットだからだ。  しいて言えば、顔と口を持ったインターネットであり、  検索したい回答を口で応えるのが彼女達の特徴だった。  見た目は可愛い素体も居る。  でも、それ以上それ以下でもない。    この場所が仮想空間だとしても、現実のプレイヤー同士で会話する方が楽しかった。それが、ネカマだとしてもだ。人間は結局、仮想の人もどきには恋をしない。  男のプレイヤーにとって、可愛いキャラの女子のプレイヤーと仲良くすることは、AIと会話するよりも数倍も有意義に過ごせるのだ。  今回も例に漏れず、このエリアを訪ねた彼も、  どういうエリアなのか? ちょっと案内してもらうだけの予定だった。 「では、こちらへどうぞ」 「危ない!?」 「えっ!?」  見た目は芝生になっている空間、普通に彼女は歩を進めた筈だった。  しかし、気が付けば見事彼の目の前でつんのめっていた。  振り返ると、そのプレイヤーは真っ赤な顔に変わっていた。  一体どうしてなのか? その時の168には分からなかった。  彼女は原因を特定するため、先程何が彼に起こったのか?  頭の中で、映像を再生した。  彼の視線を起点にカメラ目線の要領で彼女はそれを追いかけた。  すると、彼の眼には168番の水玉模様の下着がメモリーされていた。
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