別れ話のあとで…

1/1
前へ
/1ページ
次へ

別れ話のあとで…

なぜ、こうなってしまったのか… 後悔しても、 どうしようもない… もう、元には戻れない。 いや、そもそも、 はじめから… 「話があるの…」 彼女からの連絡 予感は、あった。 思った通りの、別れ話。 だから、 あっさり済んで 店の外へ出た。 雨が、降っていた…。 「雨、降ってきたね。 タクシー拾おうか。 遅くなっちゃったし。 ちょっと、待ってて」 彼は、歩道から出て 片手を斜めに上げ合図する。 しかし、 皆、考えることは同じなのか、 なかなか “空車”の表示を出した車はなく、 つかまらない。 「いいよ・・・小雨だし。 地下鉄の駅も、 そう遠くないから、 歩くよ。 冬じゃないから、 濡れたって寒くないわ。」 「こんな時間に、 そんな顔して 濡れた姿で 地下鉄に乗ったら、 危ないだろ。 最後に… 嫌な思い出なんか 残したくないだろう? お互いに…。 ちょっと待ってろよ。 すぐ、つかまるからさ。」 「私が悪いのに、 嫌な思いさせられたのに、 優しいのね。」 「お前が悪いわけでもないし、 俺のせいでもない。 お前の気持ちが 俺にないことは、 わかってたさ…。 結構前から。 気づいていない ふりしていただけ… 俺を見ていなくても 一緒に居たかったから。」 「ごめん…」 「あやまるなよ…」 「どうしてそんなに優しいの?」 「優しくなんかないよ。 きっと… 雨のせいで そんな風に見えるだけだ。 乾いてひび割れたものも、 一時(いっとき) 潤っているように誤魔化される。」 「でも…」 「もういいから… もう… いいよ…」 彼は再び車道を向いて、 タクシーを捜す。 「…ほら、車来たよ。 じゃあ… 気をつけて…」 もう、 これが最後 逢うことも、ない…
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加