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「うわっ」
のけぞる海斗にお構いなく、京極蓮は「ふうむ」と顎をさすっている。
4月に転校してきた京極蓮は、一匹狼のキザな奴だ。
トレードマークのベレー帽を目深にかぶり、誰ともつるまず、休み時間も授業中も文庫本を顔に近づけ読みふけっている。
それでいてスポーツ万能、成績も超優秀。IQ180との噂もある。
前に算数の時間も読書していた京極蓮に、担任の松崎がわざと難しい問題を当てたら、あっさり解いてしまった上に「僕からも質問があります。先生は、掛け算より足し算の方が難しいという望月理論についてどう思われますか? これは数学の発展を支えてきたアンリ・ポアンカレの考え方と真逆な発想に基づいていますよね? つまり『同じと見なせるものが、同じでありながら同時に異なる』ことを考えることで……」と、よくわからない質問を繰り出して「もういい、座れ」と松崎の鼻をへし折った。
過去に何があったのか知らないけれど、担任の松崎は、顔がいい奴は性格が悪い、頭のいい奴は偉い、つまりオレは偉い、みたいなひねくれた性格だから、京極蓮によって赤っ恥をかかされた時は、正直クラス中がすかっとしたけど。
だからといって、友達になれるかって言ったら、また別問題だ。
松崎エピソードも含めてアイツは、変わっている。
しかも、松崎が目の敵にするだけのことはあって、顔面偏差値が超絶高くて、女子にモテる。
京極蓮がゴミを拾っただけで女子が「きゃーきゃー」騒ぐ。
うらやまし……
つまり、京極蓮と自分は絶対に性格が合わない、と、海斗には自信があった。
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