桜を嫌う僕に小さな贈り物

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 母親は俺が生まれてすぐ他界した。今は親父と二人暮らしだが親父はほとんど帰ってこず、自分の会社で寝泊まりしたり、会社の近場のホテルを利用しているらしい。まあ親父は社長だから自由なんだろう。  俺も一人暮らしみたいなもんだし、ある意味自由気ままだ。帰って制服着替えて漫画読んだり。弁当は準備してないが朝飯や晩飯はたまに自炊したりもしているし、学年もいい線いってるからあまり焦って勉強しなくてもいい。   カチャッ。ガラララ。  「やあ、慎吾。パパだよー」  「へぇ。ここが高山家なんだ。おじゃまします」  「珍しいな親父。帰って来るなん……」  するとそこには今朝見た薄ピンク色のサラサラとした長い髪をしていた女の子が親父の隣にいた。今は制服じゃなく白いヒマワリ柄をしたワンピースを着ていた。良く見ると身長は低めだな。156cm位だろうか。  「君は今朝会った……」  「なんだもう会ってたのか。まあ、中で話そうか」  それだけ言うと親父と女の子は靴を脱いで家へ上がりリビングへと歩いて行く。  そして向き合う俺と親父とその隣に座る女の子。  「まずは自己紹介だ。こいつは慎吾。我が高山家で俺の自慢の息子。そしてこっちの女の子は桜とゆう名前を名付けた」  「名付けた? 名付けたってどういうことだよ?」  「実はな? 何を隠そうこの女の子は我社で開発した高性能なアンドロイドなんだ! ふっふ、すごいだろ? ちなみにスリーサイズは……ぶぉっ?!」  バチンッ! そこで女の子が親父に向かって平手打ちをした。つうか凄いおとがしたぞ。痛そう……。  「バカ東っ! 女の子のスリーサイズを軽々しく言うものじゃないわっ ほんっとバカじゃないのっ失礼しちゃう」  アンドロイド? な女の子はぷんぷん怒ってらっしゃる。確かに高性能だ。ただの気が強い女の子にしか見えない。ちなみに東とは俺の親父の名前だ。高山 東(たかやま あずま)。そして俺が高山 慎吾(たかやま しんご)。  「あたた……。なっ? 女の子としての羞恥心もある。高性能だろう?」  はははと笑いながら平手打ちされた頬をさする親父。痛かったんだな。良い音がした。  「パパはなぁ、慎吾の事を考えて桜の季節を好きになってもらいたくて頑張ったんだ。で、桜って名前だ。この時期は慎吾元気ないからなー」  「別にそんなことしなくても良かったのに」  俺の事気にしてそんな事しなくても……。
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