桜を嫌う僕に小さな贈り物

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 「ね……」  「……ぇ……」  「ね……て……んご……」  「ねぇ……」  「ねぇ起きて。慎吾」  「……ん……なんだよ……」  まどろみの中、まだ鳴らない目覚ましを探す。  むにっ……むにっ?  「あら。朝から胸触るとか良い度胸じゃない慎吾」  「……あ。……ごめん! つうか近いよ桜! それにまだ目覚まし鳴ってないだろ」  「何言ってるの。早起きした方がいいじゃない。ほら起きて」  まだ朝の五時だろ。いつもならまだ寝てる時間なのに。くそう。  「桜はそれだったか」  ゼリーチューブ飲料を食べてる桜。ちょっとシュール。俺は昨日の内に準備してタイマーつけて炊いていた白飯に作り置きしていた味噌汁をいただいて家に鍵をして学校へ向かう。  校門の満開の桜を通ればまた思い出す。由月……。  「はぁ……」  「溜め息はよくないわ慎吾。ほら元気だして。腕組んであげるから」  そう言いながら俺の隣を歩いて一緒に学校へ向かう桜が俺の右腕を強引に組んでくる。おいおい、他にも登校してる生徒がいるんだ、恥ずかしいぞ。  「恥ずかしいって」  「そお? 見せびらかしたらいいじゃない」  そのまま構内へ入って行く。流石に恥ずかしいので構内に入ったら腕組みは開放してもらった。  「あ、あたしまずは職員室に向かうから」  「そう言えば転入手続きしたんだったな。大丈夫? 職員室わかる?」  「うん。大丈夫。またね、慎吾」  それから桜と別れて俺は自分の教室に向かった。  「あ、おはよう。慎吾ー」  「おはよう。慎吾」  「おはよう。恋心。璃月」  「聞いたか。慎吾。今日転入生来るんだってよ。きっと可愛い女の子だぜー」  「璃月ったら。そんなんばっかね」  「恋心達は元気だなー」  俺は憂鬱だ。俺の周りで騒ぐ幼馴染達。そして朝のホームルームの時間になると……  ガララ……  「みんな席についてるな。今日は転入生がいる。入れ」
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