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「いや、トイレで冷やさなくてもいいでしょ。もうすぐ夫婦になるんだからさ、その前にちゃんと仲直りしよう?」
勘違いして怒って鞄で殴ったのに、蒼の口調はいつも通り優しかった。
「じゃあ、成功したやつ作ってくれたら出る」
「分かった。作ってくるからちょっと待ってて」
出るに出れなかったから無理なことを言ったのに、笑いながら聞いてくれて。すぐに成功するとは限らないって蒼も分かっているはずなのに。
その後しばらくして呼びに来てくれた。
説得に負けて渋々出る。
ボウルに積み上げられていた一面黄色のゆで卵と、一つだけお皿に乗っている白身と黄身が逆転したゆで卵。
「わ!凄いね。でも、こんなにどうするの?」
「せっかくだし俺も一緒にダイエットしようかな」
翌朝食べた黄身返し卵は、かまぼこみたいな食感がした。この時の卵のことは一生忘れないと思う。
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