きつねつき

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「よろしい。ではこちらへどうぞ」 祓いの儀式を行うため、祭壇の前へと案内する。 しかし小池恵子さんはそれを見て顔を歪め、回文で不満を漏らした。 『(うそ)くさいさ、くそう……』 「何をおっしゃいますか」 失礼な。通販で揃えたこの立派な祭壇のどこが嘘くさいと言うんだ。 きちんとネットで厳選して手間暇かけた自慢の祭壇だぞ。 『(なん)だか……貴様(きさま)詐欺(さぎ)か?旦那(だんな)』 「ご安心ください。詐欺などではありません」 そうだ、決して詐欺なんかじゃない、失礼な。 そもそも、今の時代に何かに取り憑かれたなんて事があるものか。あれだけ存在した心霊写真も消滅しているじゃないか。 病は気から、と言うだろう。 信じる者は救われる、とも。 お祓いを受けたのだから自分はもう大丈夫だと、そう信じる事が大切なんだ。 だから今までこうして俺は、悩める人々を救って来たのだ。 そして信頼を得る為にはタダではいかん。きちんと料金をいただかないとな。 「それでは儀式を始める前に、邪霊を封じる壺をお選びください。こちらが三十万円……」 次に、やはりネットで厳選して取り寄せた壺を並べると。 『はは……ははは……ははははは!』 彼女の雰囲気があからさまに変わっていくのが分かった。笑い声は普通に回文だよな。 『ふっふっふ……呆れたものよ。インチキも良い所じゃ』 おお、これは……?回文じゃないぞ。 先程までの若い女性らしい可愛らしい声ではない。まるで地の底から響く様な…… まさか!
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