不思議な石

5/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「紗月、久しぶり!」 湊海が笑顔で私に花束を渡してくれた。 湊海とは高校卒業後も時々会っていたけれど、私が女優の仕事を始めてからは忙しくて会うことができず、湊海とは4年ぶりの再会となっていた。 湊海も大学に進学していて、湊海と私は大学を卒業して2年が過ぎていた。 大学卒業後、湊海は商社に就職したと私は聞いていた。 「仕事、忙しい?」 私が湊海に質問すると、 「ううん、残業はそんなに多くないし、仕事にも慣れたよ!」 と教えてくれた。 湊海が、 「紗月は凄いね!  女優になる夢を果たしたんだね!」 と言葉をかけてくれたので、私が鞄から石を取り出して、 「湊海からもらったブラジルのこの石のおかげだよ!  湊海から言われたように、緊張した時にこの石を両手でしっかり握りしめて1分間目をつむると不思議と落ち着くんだよね!」 と湊海に伝えた。 すると湊海は驚いたような複雑な表情をして、 「ごめん紗月、その石私の実家の近くを流れる安倍川の河原で拾った、ただの石ころだよ!」 と話してくれた。 私は呆れて湊海を怒る気にもなれなかった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!