2. 僕の夢

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 そんな、もう入団ってことになってる。全力で拒否しないと。  このままじゃ本当に、無理矢理にでも引っ張られそうだぞ……怖くなってきた。 「だから、僕にはできないよ。演技なんて……」 「いや、今朝のあの涙は、とにかくすごかったよ。泣く演技が一番難しいんだ」 「あれは演技じゃなくて、本当に泣いたの!」 「じゃあ何で泣いたの? 泣くような場面じゃないのに」  それは……悔しかったからだ。みんなが泣かないと思うような場面でも、僕は心に雨が降ったら涙として出てしまうのだ。  こんなに自由に好きなことをやっている人たちに比べて、僕はお父さんの敷いたレールの上を歩こうとしている。  本当は、声優になりたいのに。本当は僕だって、声を出して自分を表現したいのに……。  気がついたら、僕の夢を二人に明かしていた。 「僕、本当は声優になりたいんだ」 「声優に? いいじゃん!」 「うん。でもね、お父さんは僕を医者にさせようとしているの。お父さんが町医者だから」 「……なるほど。だから、悔しくて泣いたのか。本当は好きなことをやりたいのに、それができないから」 「そ、そうだね……」  あ……やばいかも。また泣きそうになってくる。元々泣き虫なのもあって、感情がすぐ涙になって溢れてくるんだ。  でも、我慢しないと、また勘違いされちゃう。そうしたらまた厄介だ。  ソウヤは僕が泣けば泣くほど、劇団に取り込もうとしてくるから。  空を向いて涙を引っ込めようとした時、ソウヤがハンカチを渡してきた。 「これ、使って。ごめんな、泣いたの茶化したりして」 「え?」 「涙を流せるの、羨ましいんだよな。俺、泣きたくても泣けないから」 「どうして?」 「辛いこと、別にないから! だから、涙を流せるカワジンが羨ましくて。でもカワジンは辛くて泣いてるんだよな……」  急に暗くなったソウヤを見ていたら、涙が出なくなった。僕の涙が演技じゃないことが、伝わったみたいだ。  というか……あれ、何この空気? 僕のせいでしんみりさせちゃったみたいで、困惑してしまう。
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