1. 謎の小劇団

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 二人の手には茶髪のカツラが握られていた。  スポーツ少年のような爽やかな男の子と、見た目はおとなしそうな髪の長い女の子だ。  あの二人、見るからに変わっている。不思議な空間を、僕は黙って観察していた。 「それにしても、あのいじめっ子の顔見たか? 焦ってたよな?」 「うんうん! 私たちの演技に飲まれてたって感じよね」  演技? 二人は演技をして、須藤君を助けたってことか? あの緊張感を、演技で出せるなんて。  どうしてそんなことができたのか……僕は開いた口が塞がらないでいた。 「ところで、さっきからそこの陰で見てる君! 隠れてないで出てきなよ!」  ギクッ! 男の子の方が、僕に向かって声を飛ばしてきている。きちんと木の裏に隠れていたのに、僕の存在に気づいていた? 明らかに僕の方を見ているし、間違いない。汗がダラダラ流れてきた。  でも、体が動かない。この木から飛び出たら、僕の姿をあの二人組に晒してしまうことになる。  いじめられているところを助けられなかった僕の姿は、誰にも見られたくない……。 「ねぇ! 君のことだよ!」 「うわぁあ! びっくりした!」 「あ、ごめんごめん! 聞こえてないのかと思って!」  いつの間に近づいていたんだ……男の子が急にひょこっと顔を出してきたから、びっくりして尻もちをついてしまった。僕の驚きっぷりに、女の子はゲラゲラ笑っている。 「大丈夫? お尻濡れてない?」 「あ、大丈夫……です」 「なら良かった。はい、立って」  男の子が差し伸べてくれた手に掴まり、立ち上がる。話しかけられて、ちょっと怖い気持ちがあった。  でもまあ、二人共優しそうではあるけど……。 「どうだった? 俺たちの演技」 「ど、どうだったって……すごかったよ」  素直な感想を答えると、男の子の顔がパッと華やいだ。わかりやすく嬉しそうな表情をしている。 「本当? やっぱり俺たちの演技は凄いんだな! やったな、みこと!」 「ええ!」  この人たち、演技が大好きなんだ……だから、あんなに危険な状況でも乗り越えられることができるんだ。  勇気もあるし、明るいし、僕にないものをこの人たちは持っている気がした。
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