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……待って、この子は何を言っているんだ?
まずこの涙、演技で出してるわけじゃないのに。
泣き虫な僕を、まだこの二人はわかっていない。だから、演技だと思われたんだ。こんなことで泣く人なんて、僕意外いないはずだから。
理解ができずに何も言えないでいると、女の子が初めて僕に話をしてくれた。
「ボルドは二人しかいないの。ソウヤはあと一人増やして演技したいって言ってて……だから助けてあげて」
そ、そんなこと言われても。僕にそんな勇気ないし。
何より、勉強しろってお父さんに怒られるに決まってる。だから声優になりたいってことも言えていないんだ。
ハッキリと断らないといけないのに……断りたくない自分がいる。
ど、どうしよう……。
「君、名前は?」
「え、川井仁太だけど」
「俺、宮風ソウヤ! ソウヤって呼んでくれ!」
「私は星みこと。みことで良いわ」
「じゃあ、カワジン! これからよろしくな!」
「カ、カワジン? 僕のこと? いや、ちょっと待って! まだやるって決まったわけじゃ」
「とりあえず、俺たち学校に行かないとだから! また会おうな!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
うわぁ、行っちゃった……学校に行かなきゃいけないのは僕も同じなのに。
一方的に誘われて、まだ入るって言ってないのに、中途半端なまま別れてしまった。
心がだいぶ揺さぶられてしまっている。演技かぁ……夢があるのは僕も同じだし、将来生かせることでもあると思うけど、それでもハッキリやりたいなんて言えないし……。
そう言えば、僕と同じ比奈北小だって言ってなかったっけ。学校でまた会ったらどうしよう……。
「やば、僕も遅刻しちゃう!」
公園にある時計が目に入って焦り出す。今の時間は一体何だったんだ。ただでさえ沈んでいたのに、より混乱してしまっているぞ。
余裕を持って家を出たのに、走っていかないと間に合わない……。遅刻なんかしたら、先生にもお父さんにも怒られちゃうし。
まったく、変な劇団に絡まれちゃったなぁ……。
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