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もう……朝の二人が気になって、授業に集中できなかったなぁ。
一日中今朝のことを考えていたら、あっという間に放課後になってしまった。
授業の時、先生の話も右から左へ流れていったけど、それで困ることはなかった。今日は一回も先生に当てられることがなかったので、ラッキーだ。
それにしても、夢が持てるなんて羨ましい……。
気分的にすぐに帰りたくない僕は、自由解放している学校の屋上に来ていた。
「じゃあ俺はサイクレッドな!」
「僕はサイクブルーね!」
「じゃあ私はサイクピンクだわ!」
「え、僕は……?」
何だ、せっかく一人になって考えようとしていたのに、低学年の生徒たちが戦隊ヒーローごっこをしている。あれは二年生の子たちかな。
端の方で体育座りをしながら佇んでいる僕とは対照的に、屋上を広く使って楽しそうに遊んでいた。
無邪気に駆け回る姿を見て、僕の悩みなんてちっぽけなのかなと不安になる。
「おいおい君たちー、この子を仲間外れにしちゃダメじゃないかぁ」
「そうよそうよー!」
おや? あの二人、どこかで見たような……。
集団の中に割って入って、見事に中心に立っている。みんなが二人に注目し始めた。
「お兄さんとお姉さん、誰?」
「なーに、通りすがりの六年生だよ」
通りすがりって……ここ屋上なんですけど。心の中でツッコミを入れる。
というか、あの二人いつの間に現れたんだ。低学年の子たちの方を見ていた間に、物音立てずにやって来たみたいだけど。
「まあいいや! 僕たち二輪戦隊サイクリンごっこしてるんだ! 邪魔しないでよ!」
「だから、この子も輪の中に入れてあげないとダメだろ?」
「だってー、サイクリンは三人組だもん! こいつは入れられないよ」
「そ、そんな……」
ああ、確かにあの子だけ輪に入れていないみたいだ。僕も低学年の時はあんな感じだったなぁ。
別に悪いことをしたわけじゃないのに、リーダー格の人の気分次第で孤立させられる。可哀想だよなぁ。
そ、それにしても、絶対あの人たち、今朝の劇団だよな?
「君たち、今週のサイクリン見てないのかー? 新たにサイクシルバーが仲間になっただろ?」
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