2. 僕の夢

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 もう……朝の二人が気になって、授業に集中できなかったなぁ。  一日中今朝のことを考えていたら、あっという間に放課後になってしまった。  授業の時、先生の話も右から左へ流れていったけど、それで困ることはなかった。今日は一回も先生に当てられることがなかったので、ラッキーだ。  それにしても、夢が持てるなんて羨ましい……。  気分的にすぐに帰りたくない僕は、自由解放している学校の屋上に来ていた。 「じゃあ俺はサイクレッドな!」 「僕はサイクブルーね!」 「じゃあ私はサイクピンクだわ!」 「え、僕は……?」  何だ、せっかく一人になって考えようとしていたのに、低学年の生徒たちが戦隊ヒーローごっこをしている。あれは二年生の子たちかな。  端の方で体育座りをしながら佇んでいる僕とは対照的に、屋上を広く使って楽しそうに遊んでいた。  無邪気に駆け回る姿を見て、僕の悩みなんてちっぽけなのかなと不安になる。 「おいおい君たちー、この子を仲間外れにしちゃダメじゃないかぁ」 「そうよそうよー!」  おや? あの二人、どこかで見たような……。  集団の中に割って入って、見事に中心に立っている。みんなが二人に注目し始めた。 「お兄さんとお姉さん、誰?」 「なーに、通りすがりの六年生だよ」  通りすがりって……ここ屋上なんですけど。心の中でツッコミを入れる。  というか、あの二人いつの間に現れたんだ。低学年の子たちの方を見ていた間に、物音立てずにやって来たみたいだけど。 「まあいいや! 僕たち二輪戦隊サイクリンごっこしてるんだ! 邪魔しないでよ!」 「だから、この子も輪の中に入れてあげないとダメだろ?」 「だってー、サイクリンは三人組だもん! こいつは入れられないよ」 「そ、そんな……」  ああ、確かにあの子だけ輪に入れていないみたいだ。僕も低学年の時はあんな感じだったなぁ。  別に悪いことをしたわけじゃないのに、リーダー格の人の気分次第で孤立させられる。可哀想だよなぁ。  そ、それにしても、絶対あの人たち、今朝の劇団だよな? 「君たち、今週のサイクリン見てないのかー? 新たにサイクシルバーが仲間になっただろ?」
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