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朱莉は最近、自分のことを名前で呼ぶのを控えている。
もう中学生だし、周りの友達もみんな「わたし」を使うし。子供っぽいと思われるのは避けたいから。
それでも、幼稚園からの友達である叶子と二人きりでいる時には、昔からの癖で。
「……ごめんね。来週なら空いてるから、朱莉んち来てよ」
誕生日当日にお祝いしたい、と言ってくれた叶子にそう返すと、隣を歩く彼女は少し寂しそうに頷いた。
「うん、わかった」
視界の端で、叶子のぼさぼさ髪がもっさりと揺れる。
五日後、七月最初の土曜日は、朱莉の十三歳の誕生日。仲良しメンバーを招いてホームパーティーを開く予定だけれど、そこに叶子を呼ぶことはできない。
「プレゼントもう選んであるから、楽しみにしててね」
鼓膜に届いた叶子のまっすぐな想いが、錆びついた冷たい鎖となって、朱莉の肺を締め付ける。
自分が叶子の「最後の友達」であるという事実は、どうしたって苦しい。
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