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 叶子と並んで校舎に入り、昇降口で上履きに履き替えて一年一組の教室にたどり着く。  正面側の引き戸を開けた途端、きらりと輝くような声が飛んできた。  入り口近くで固まった運動部の女子三人が、眩しい笑顔で朱莉に手を振っている。  ちなみに、彼女たちの視線が朱莉の隣にいる叶子に合うことはない。   「おはよう、みんな」  朱莉の返した挨拶が終わらないうちに、真ん中の友達の視線が朱莉のカバンに動く。 「それ買ったの?」  彼女が指差しているのは、カバンにぶら下がったクマのぬいぐるみだ。 「そう、こないだね。どうかな?」 「めっちゃかわいい!」 「ねー!」 「やばーい! わたしもほしい!」  仲良しのみんなの反応に、朱莉は内心ほっとする。  ——よかった。間違ってなかった。  朱莉の周りの女子たちはみんなそれぞれ、スクールバッグにキーホルダーをぶら下げている。動物のとか、有名なキャラクターのとか。  子供っぽすぎなくて、だけどちゃんとかわいくて、そして誰とも被らないキーホルダー。簡単なようで難しいこの持ち物選びをクリアすることで、朱莉は今日もみんなと友達でいられる。 「いいなあ、触っていい?」 「もちろん!」  ぬいぐるみを差し出すと、友達はやさしい手つきでそれをもふもふともみはじめた。 「どこで買ったの?」 「あそこあるじゃん、駅前に最近オープンした……」 「あ、知ってる! 気になってたよねー!」 「かわいいのたくさんあったよ! 今度一緒行こ!」 「行くー!」  鞠みたいに弾む会話。そこに、朱莉と一緒に登校してきたぼさぼさ髪の女の子の入る隙間はなかった。
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