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「どうする?」  バドミントン部の友達が口を開いたのをきっかけに、会議が始まった。 「うーん、わたしはどっちでもいいけど」 「六人ってちょっと多いかな」 「たしかにー。話しづらいかも」 「まあ、分担できないことはないかなあ」 「結構作業量多そうだしねえ」 「人数いた方が早く終わる説?」 「じゃあ」 「うん」 「そうしよっか」 「朱莉、いい?」  一通りの探り合いの後、バスケ部の友達の目が朱莉に向いた。朱莉は「そうだねえ、一応訊いてみるよ」と言ってから窓際の方に歩き出す。  朱莉が声をかけるまで、叶子はこちらを見ようとしなかった。まるで朱莉が近づいてきていることに気づいていないかのような振る舞い。「待ってました」という気持ちをバレバレにしたくない、という気持ちがバレバレだった。 「ねえ」  叶子のそばで立ち止まり、肺が詰まるような感触を覚えながら口を開く。 「わたしたちのとこ来ない?」  二つのことを意識した。  一つは、自分を「わたし」と呼ぶこと。  叶子の前だけれど、それと同時にみんなの前だ。子供っぽいと思われたくない。  もう一つは、叶子の名前を呼ばないこと。  叶子と昔からの友達であることは、一応他の女子たちにも知られている。それでも、たくさんのクラスメートが近くにいる中で、叶子の名を親しげに呼ぶのは気が進まなかった。 「うん。じゃあ」  そっけなく頷いてみせた叶子の態度に、なんだかカチンと来てしまう。  何が「うん」よ。仕方なく入れてあげてるのに。  のそのそと歩く姿、朝よりもさらにぼさぼさの髪。ねえ、もっとちゃんと中学生してよ。髪くらい結んだら? スカート長すぎ。ニキビくらい気にしなよ。靴も、筆箱も、カバンも、全部ダサいんだけど。  そんなんだから、誰もあんたと友達になりたがらなくて、だけど一人ぼっちにするわけにはいかないから、こっちのグループが苦労することになったんだよ。
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