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「あ、ありがとう……」  でも、なんで今?  朱莉の飲み込んだ疑問を察したように、叶子がおどおどと説明を始めた。 「ほ、ほんとは、今度家に遊びに行った時に渡そうと思ったんだけど、朱莉ちゃん最近、部活とかで忙しそうだから……えっと、とりあえず、開けてみてほしいな」  朱莉は念のためもう一度廊下を振り返り、まだ教室に誰も来ていないことを確認してから、金色のビニタイをそそくさと解いた。なるべく早く終わらせたほうがいい。  中身を取り出して、朱莉は全身に寒気が走るのを感じた。 「ちょ、何、これ……」  そこに入っていたのは、魔法のステッキだった。  もちろんほんとに魔力があるわけではなくて、そういうキーホルダーだ。サイズは朱莉が普段使っているシャーペンくらい。全体的に黄色で、先端部分では金色の星が煌めいている。  朱莉が幼稚園児の時に見ていたアニメのグッズ。叶子との出会いのきっかけとなったキャラクターの使用道具だった。 「朱莉ちゃん、好きだったよね」  誇らしげな、それでいてどこか不安げな叶子の瞳を見て、朱莉は悟った。  ——この子は、朱莉をつなぎとめようとしているんだ。  クラスや部活のみんなが知らない朱莉の一面。幼稚園から続く自分たちの友情の蓄積。  それを使って、朱莉が自分から離れていないように、引き止めようとしている。  叶子の考えが、気持ちが、自分の右手の中にあるアニメグッズからひしひしと伝わってきて。 「ねえ、叶子」 「ん?」 「あんた、バカじゃないの」
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