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それを見て、俺は何故マリィが自分に対して厳しい態度をしていたのかを知るーー。
現状で分かった雪の事が事細かく記されたその診断書には、帰りの車内で見た虐待の傷跡から想像していた事態よりも更に酷くて……。何よりも診断書と一緒に貼られていた、雪の裸体の写真を見て、俺はまた言葉が出なくなった。
虐待の傷跡は上半身だけでなく、鼠蹊部、太股、尻……。ズボンを履いていた際には見えなかった部分にもあり、中でも太股に無数にあったのはタバコを押し付けられたような火傷の痕。
昔、外でタバコを吸ってた際に強い風が吹いて灰が直接肌に触って、それだけでも十分熱かった記憶がある。
それなのに、さっき俺が火を消す際に灰皿に押し付けるようにされたら……。そんなの、熱いや痛いではすまない苦しみや辛さがあったに違いない。
それだけじゃない。
体内からは検出されなかったものの、雪の身体に付着していた体液は一人のものではなかった。つまりそれは、雪は複数の奴らに……、……。
「避妊や感染症対策は、しっかりしてる奴等だったみたいね。今の段階でHIVとか感染症の心配はなかったから大丈夫だと思うけど、一応紫夕ちゃんも暫くは女遊び控えてね?
脅すようで悪いけど、綺麗にする前で怪我してる雪ちゃんに触った以上、可能性は0じゃないから……」
マリィはそう言って全てに目を通した俺から資料とファイルを取ると、片付けながら言った。
「雪ちゃんは色んな意味で普通の子供よりも、何倍も何十倍も難しい子。ただ可哀想だから引き取りたい、なんて生半可な気持ちじゃ……。ハッキリ言って、今の紫夕ちゃんにはアタシは無理だと思うわ。
深入りはやめて、今日の事は綺麗サッパリ忘れて、もう関わらない事をオススメする。中途半端な優しさは、また余計に雪ちゃんが傷付くだけだから」
何も……。
ただただ言われるばっかりで、頷く事も、一言も返せなかった俺を残して、マリィは休憩所を去って行った。
……
…………。
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