第1章(2)紫夕side

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*** 三日後の休日ーー。 俺は、朝しっかり歯磨きして、朝風呂にも入って、買ったばかりの新品の服を着て医療施設に向かっていた。 今までのどんな可愛い女の子とのデートに出掛けるよりも身綺麗にして、ドキドキして、(ゆき)の病室に向かってたんだ。 タバコの臭い、しねぇよな? 三日前から吸ってないと言っても十年以上吸っていたから、何だかもう当たり前のように染み付いているような、自分では気付かないだけで臭うんじゃないか?って気になる。 今日、(ゆき)に会いに行く事はマリィには内緒だった。 アイツは確かに厳しくて、今までも何回か色んな事を注意されてきたが、最後は結局持ち前の明るさで仲良く出来て、次会った時には「紫夕(しゆう)ちゃ~ん!」って元気な変わらないテンションで居てくれた。 でも、今回ばかりはいつもと違うという事は、長年の付き合いで分かってる。俺が(ゆき)に会いに行くって言ったら、間違いなく反対されると思ったから……。 だから、俺は一人でここに来た。確かに現状、俺には(ゆき)と一緒に暮らせる資格が認められねぇし、大した事は何も出来ない。 でも、それでも俺は、(ゆき)に会いたかったんだ。 タバコをやめたあの夜から今日まで、少しは元気になったか?とか、飯ちゃんと食ってんのかな?とか……。気になって、気になって、仕方なかった。 ーー……っ、あった。ここだよな、病室。 (ゆき)の病室前に着くと、「ふうっ」と一呼吸して、俺はノックするとゆっくり扉を開けて中を覗いた。 「(ゆき)?……(ゆき)、いるか?」 しかし、声を掛けるが返事がない。入り口からベッドの方を見るが、そこに(ゆき)の姿はない。 ?……検査とかに、行ってんのか? 俺はそう思って、戻って来るまで中に入って待とうと部屋に足を踏み入れた。 けど、その際にふと横目にチラッと人影が見えて、俺は少し驚いて身構えながらその方向をしっかり見た。すると、そこに居たのは……。
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