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「ーー……っ、へ?ゆ、雪?」
なんと、視線の先に居たのは雪だった。
部屋の角隅で、床に直接尻餅を着いて両膝を抱えて俯き、雪は蹲っていた。
な、なんでこんな場所に居んだ?
「雪?」
呼んでも反応が無くて、どこか具合でも悪いのかと心配になった俺が歩み寄ってそっと頭を撫でると、ビクッと反応した雪が顔を上げた。
片膝を着いて屈んでいた俺は雪と結構な至近距離で視線が重なって、胸がドキンッと弾む。
っ、何度見ても、この瞳……困るな。
雪の薄水色の瞳は綺麗過ぎて、苦手だ。見つめられると俺は何故か恥ずかしくなって、困る。
けど同時に、もっと見ていたいと感じるのも本音だった。
「っ、ここで……寝てんのか?」
「……」
「床、冷たいだろ?それに汚れちまうぞ?」
「……」
ドキドキする鼓動を抑えて声を掛けてみる。が、雪は何も答えず、目を伏せて逸らした。
その時、俺はふと思った。
「……。
お前、なんか前より痩せてね?」
思わず、そう言葉が出た。
思い違い、だろうか?俺の目に映る雪は、三日前よりも痩せていて、何だか元気もない気がしたんだ。
「飯、食ってねぇのか?」
「……」
雪は何も言わない。
三日前、初めて会った時はほんの少しではあったが喋ってくれたのに、今日は何も話さない。
そんな雪の様子が、俺は何気にショックだった。入院して、治療や療養して、もう少し元気になってるのを期待していたし、何より自分が来た事をもう少し喜んでくれると思っていた。
自分がそうだったみたいに、会ってない間も俺の事思い出したりして、会いに来るのを楽しみにしていて欲しかったんだ。
……そうだよな。
雪にとったら、俺も怖いおじさん、だよな。
初めて会った時、俺は雪を怒鳴りつけて殴った。雪が生きる事に絶望していた本当の理由を知らなかったとは言え、それは消せない現実。
そんな俺が雪に好感を持ってほしい、なんて無理な注文だと思った。
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