第1章(2)紫夕side

5/5
前へ
/589ページ
次へ
兄のように、父のように接する事をきっと俺は無意識に心掛けて、自分の気持ちにセーブをかけていた。 その後。 俺は一旦病室を出て、本部内にある店でクッションとブランケットを買って、再び(ゆき)の元へと戻った。 すると(ゆき)は、やはり最初に居た部屋の角隅に戻って(うずくま)っている。 ここが1番、落ち着ける場所なんだな。 俺は静かに歩み寄ると、買い物袋から買ってきたブランケットを取り出して(ゆき)の身体を包むようにそっと掛けてやった。そしたら、(ゆき)はゆっくり顔を上げて俺を見る。 「それ、やるから使いな?あとさ、直接床に座るの冷たいだろ?だから……。 ジャ~ン!クッションも買って来たからさ、これ下に敷こうぜ?」 (ゆき)には、俺のその行動が意味不明だったんだろうな。目の前で笑いかける俺を、ただじっと不思議そうに見ていた。 「……ちょっとだけ、触るな?」 俺は声をかけて、(ゆき)をなるべく驚かせないように片手で自分の方に抱き寄せると、もう片手で床にクッションを置いてやり、すぐにその上に戻してやった。 震えてねぇし、大丈夫だよな? 暫く様子をみていたが嫌がっている様子もなければ、むしろブランケットに包まれた(ゆき)は心地良いのかうつらうつらと眠たそうにしていた。 プッ、なんかコイツ……小動物みてぇだな。 そんな(ゆき)を見て、思わず俺には笑みが溢れる。 ただの自己満足かも知れない。でも、ほんの少しでも自分のした事で(ゆき)が安らぐんなら俺は嬉しかったんだ。
/589ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加