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俺と雪の関係を、愛し合った夫婦だと正式に証明出来るものなんてなければ、仮にも性別が男であった雪が紫愛の母親である事も世間に証明出来るものなんて……。いや、それは絶対に公表なんて出来ない。
つまり、俺は精神状態が不安定な時期に弱みにつけ込まれた挙句、最終的に子供を押し付けられた可哀想な男だと……思われている。
変に弁解すれば深く追求されたり、うっかりボロが出てしまう可能性もあるし、大切な家族や心から信頼出来る仲間だけ真実を分かってくれていたら、それで良いと思った。
何より、
『紫愛には、オレの事は深く話さないで。
「身体が弱くて、物心がつく前に亡くなった」って、伝えてほしい』
雪が、そう……望んでたからだ。
紫愛に、平穏な人生をーー……。
雪の願いを、俺は絶対に守るって決めたんだ。
だから頼むから……。
頼むから、そっとしておいてくれよ……っ。
雪がいなくなってから、まだ二年も経っていない。
それなのに……。俺にまた試練が襲い掛かる。
「子供には母親が必要だぞ。
ま、とりあえず明日だ。くれぐれもその娘さんに、失礼のないようにな」
そう言った総司令官に、胸元に押し付けられるようにして渡された見合い写真を、俺は見る気にはなれなかった。
……
…………。
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