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俺の気持ちとは裏腹に、時間は待ってはくれない。
総司令官から言われて昼過ぎから非番になった俺は、見合い相手を出迎える為に本部の出入り口である門の前で到着を待っていた。
見合い相手の名前は、星野 葵。とにかく、第一印象は失礼のないようにしなきゃな……。
車が見えて来ると、深呼吸して覚悟を決める。
最早ここまで来てしまったら、会わないで断る事は出来ない。ひとまず悪い印象を与えずやり過ごして、最後に丁重にお断りするしかないと思った。
しかし。
俺は、会う前に断らなかった事を後悔するーー。
こう言う事は後回しにすればする程。先延ばしにすればする程、断り難くなると言うものなのだ。
徐々にスピードを落とし、俺のすぐ側に止まったワゴン車。その扉を開け、出迎えようと思ったその時だった。
「初めまして!望月総指揮官!!
南支部、総司令官が娘の星野 葵!只今到着致しましたぁ!!」
ガラッ!!と勢い良く開いた車の扉と同時に耳に入ってきたのは、これまた勢いの良い元気な自己紹介。
そして、目に映ったのは見合い写真の和服美人からは想像もしていなかった、ショートカットにラフな服装のボーイッシュな女性だった。
マ、マジか……?
言われて見れば、面影はある。
けど、見合い写真で見た感じと、想像していた雰囲気のあまりの違いに俺は驚いて、言葉を失って……ただただじっと見つめてしまう。
すると、車から降りてきた女性は照れくさそうに頭をかきながら言った。
「やっぱり、ビックリします~……よね?
ごめんなさいっ!お見合い写真は、父にああしろ!って言われて、ずいぶんと盛りました!
けど、今日はどうしても偽りたくなくて……。これが、普段の私……なんです」
そう言って彼女は頭を深く下げて、ものすごく申し訳なさそうにしていた。
「ガッカリしましたよね?」って……。
でも、俺はその逆で……。そんな彼女に、思わず笑っちまった。
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