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実際に目の前に現れた彼女に俺は何だかホッとして、好印象を抱いたんだ。
緊張が解けて、俺は笑いながら口を開く。
「そっかそっか!確かに、アレはずいふんと盛ったな~!
あ、わりっ!悪い意味じゃなくてさ、その……いいじゃん!それくらい日に焼けてた方が、健康的だよ!」
見合い写真で見た時にはずいぶんと美白だったのに、目の前の彼女はこんがり小麦色。女性に向かってそんな事言うのは、かなり失礼な事だったろう。
けど、それを話題にした俺に、彼女は顔を上げると嬉しそうに微笑った。
「っ、ですよね?!今時、女は色白でなくちゃいけない、なんて間違ってますよねっ?!
良かったぁ~。やっぱり、思っていた通りの男性だぁ」
人間はギャップに弱い。
そして、想像していたよりも良い子。
この合わせ技に、俺はつい、流されてしまう。
「望月さんっ……。いえ、紫夕さん、って呼ばせて頂いてもいいですか?」
「!っ、お、おう」
「ありがとうございますっ!今日はよろしくお願いします!!
あ、私の事はどうぞ「葵」って呼んで下さいねっ?」
そう言って葵は、とびきりの笑顔で抱きつくようにして俺の腕に纏わり付いてきた。
ーー……しまった。
これ、なんか……不味くねぇか?
その状況に、俺はようやくそう思うのだ。
……
…………
葵は、知れば知る程に良い子だった。
別支部の司令官の娘、と言う肩書きだけでなく、魔器は扱えないものの本人も守護神の調査員の一員として活動していた。
しかも、彼女が率先して行おうとしていた事は、魔物の習性や生活を知り、彼らとどう上手く生きていこうか?と言う……。まさに、俺が目指している"人間と魔物が共存出来る世界を創る"と言う目標と一緒だったのだ。
おまけに屈託なくて、明るくて、飾らない。その調子と雰囲気に俺も飾らずに居られたんだ。
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