34人が本棚に入れています
本棚に追加
番外編①紫夕side(3)
翌朝ーー。
結局、昨夜も本部に泊まった俺は自宅に朝帰りをする事になった。
今日は久々の休暇。本来なら休みの前夜は俺が家族サービスをする日で、マリィは自由の身。弥夜と紫愛と一緒に風呂に入って、三人で川の字で寝るんだ。
けど、葵と別れた後。俺はやっぱり子供達と顔を合わせづらくて、ひと晩時間を空けた。
断ると心に決めていたのに、断れず……。何だかんだ雪以外の相手とデートのように過ごしてしまった罪悪感があったからだ。
子供は敏感だからな。弥夜は言うまでもなくすでに鋭い勘を持ってるし、何より紫愛の純粋な瞳に見つめられる事に耐えられそうにない。
でも、俺はこの後。
そんな自分の身勝手さを後悔する事になるーー……。
自宅の玄関辺りに辿り着くと、家の中からものすごい泣き声が聞こえた。泣き声の主は、間違える筈のない愛娘のもの。
ここ最近、紫愛の大きな泣き声を聞いた事がなかった俺は驚いて、一瞬罪悪感とか全部忘れて、急いで玄関の扉を開けて家の中に入った。
「っ、紫愛?!どうしたっ!!何かあったのかッ……!!」
そう声を上げながら玄関を上がろうとした俺に、「ぱぁぱ~!!」と泣き叫びながら奥の部屋から駆けて来て、飛びついてきたのは紫愛。「うわぁあ~ん!!」と大きな泣き声を上げたまま、俺にしがみついて離れない。
「っ、どうしたんだよっ?!どっか痛いのかっ?マリィか弥夜に怒られたのかっ?!」
その状況がすぐに飲み込めず、すっかり混乱してしまった俺は紫愛にそう尋ねた。
慌てて屈んで抱き締めてやるが、泣き叫び続ける愛娘に俺はどうしていいのか分からずオロオロする事しか出来ない。
すると、そんな不甲斐ない俺にズバンッ!!と心に突き刺さる一言が飛んでくる。
「紫夕ちゃんがいきなり帰って来ないからでしょーが!!」
それは、静かに怒りを秘めたマリィの言葉だった。
最初のコメントを投稿しよう!