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数日経っても、俺の心のモヤモヤは晴れなかった。
むしろ、考えれば考える程に沼にハマっていく気がしてならない。
雪が居なくなってから、誰よりも紫愛の事を分かろうとしてきた。
例え血の繋がりがなくても、弥夜に甘えられたり、頼ってもらえるように接してきた。
けど、"つもり"だったんじゃないか?って思わされる。
「……紫夕さん?何読んでるんですか?」
「!っ、……あ、葵」
昼休憩。
休憩室の椅子に座り、"ある本''と真剣に睨めっこしていると葵が不思議そうに覗き込んできた。
慌てて隠そうとするがすでに遅かったらしく、葵は心配そうに俺に言う。
「それ、育児書ですよね?
……お子さんと、何かあったんですか?」
「っ、……あ、いや…………」
そう、俺が読んでいたのは子供達と上手く向き合っていく為について書かれている育児書。
今までこんな本に手に取った事はなかったが、今回ばかりはすっかり不安になった俺は本に縋っていたんだ。
俺が問い掛けに気不味そうにすると、葵は空気を読んでくれたのか育児書について深く触れず、隣に座って明るい声で言う。
「明日のお休みは、お子さんと一緒に過ごしてあげて下さい」
「!……え?」
その言葉に、俺は驚いた。
明日、俺は休暇。そして、葵が本部に居られる期間の中での最後の休暇だった。
だから明日の休暇は、もう一度葵とデートの予定だったんだ。
それなのに、彼女は笑顔で言ってくれる。
「私は幼い頃、父が仕事ばっかりで寂しく想う時期がありました。
同じ守護神で働く立場になって、今は尊敬してますけど……。やっぱり子供の時は、お父さんと遊びたかったです!」
自分の子供の頃の想いを話しながらも、きっと何となく、俺が悩んでいる事について分かってくれている様子だった。
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