番外編①紫夕side(4)

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番外編①紫夕side(4)

「……父さん。あの人、誰?」 翌日。公園と一緒になった少し大きめの広場に行くと、入り口に立ってこちらに手を振っている(あおい)に気付いた弥夜(やよい)が、不思議そうな表情で尋ねてきた。 言い出し辛くてなかなか話せなかったが、もはやここまできて話さない訳にはいかない。俺は、弥夜(やよい)の質問に答える。 「今日は、な……。あの人も一緒に遊ぶんだ」 弥夜(やよい)にそう言った後に俺が手を振り返すと、(あおい)は嬉しそうに微笑って駆け寄ってきてくれた。 そして、弥夜(やよい)とその背後に隠れるようにして自分を見上げていた紫愛(シア)に、屈んで目線を合わせながら自己紹介をする。 「はじめまして! 弥夜(やよい)君と、紫愛(シア)ちゃん、よね? 私は星野(ほしの) (あおい)。今日一日、一緒に遊びましょう?よろしくね!」 俺と初めて会った時と変わらず、元気に屈託なく、笑顔で子供達に挨拶する(あおい)。 そんな彼女に、弥夜(やよい)は「よろしくお願いします」と返すもののその表情は固く戸惑っているようだった。一方の紫愛(シア)は、弥夜(やよい)の背後に隠れながらチラチラと様子を伺っている。 無理もない。 人型魔物である事から、二年前まではどちらかと言うと人と接する事を避けさせてきた子供達だ。 本部(この)近くに引っ越して来てからも、大丈夫だ、と確信が出来る人や、生活していく為の必要最低限の人達としか付き合わせてこなかったからな。 弥夜(やよい)紫愛(シア)も見た目は普通の人間と変わらないが、万が一魔物としての特性が出てしまったら困るし、まだ幼い故にその能力を抑える事が出来るか、と言う不安もあった。 けど、これを機に、少しずつ慣れさせていく事も大切だと思った。 ……いや。俺は、きっとそう思いたかったんだ。 それを、子供達と(あおい)を会わせる口実に……していたんだと思う。 …… …………。
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