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今の弥夜のように、ただ自分の大切なものに一途だったのなら……。俺はこの後、大切な紫愛を泣かせたりしなかった。
「ぱーぱ!」
「!っ、……ん?どした?紫愛」
「じーしゅ!」
「ん?……ジュースか?」
「うん!じーしゅ!のど、かあいたー!」
つい、二人を見つめてボーッとしていたら、紫愛がいつの間にか俺のズボンを引っ張って、そう言っていた。
広場の時計を見ると、ここに来てからもうすぐ二時間。ずっとはしゃいでいたから喉が渇いたのだろう。
それに、いつも外へ遊びに行く時は水筒にお茶を入れて持参するのだが、今日は葵の事もあってすっかり忘れていた。
「確かに、喉渇きましたねー!私、何か買ってきましょうか?」
紫愛の後を追ってこちらに歩いて来た葵が、飲み物の自動販売機を指差して言う。
「ああ!いいよ、俺が買ってくる!子供達とここで遊んでてくれ。
……弥夜。頼むな?」
気を遣って声を掛けてくれた葵に俺はそう言葉を返し、弥夜にこの場を任せると、飲み物を買いに行く為にその場を離れた。
……
…………。
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