34人が本棚に入れています
本棚に追加
***
何とか飲み物を買い終え、俺はみんなの元へ戻ろうと足早に足を進める。
最初は弥夜の後ろに隠れて様子を見ていた紫愛だったが、暫くみんなで遊んでいたらいつの間にか葵の傍にも行くようになったし、一緒に砂場で楽しそうに遊んでいた。
俺も気持ちを切り替えて楽しもう。
まだ再婚とか、家族になる、とかは考えられないが……。とりあえず、いい雰囲気には違いないと、俺は思っていたんだ。
だから、驚いてしまった。
「やー!!ちだーう!!」
!!っ、紫愛……?!
先程別れた場所までもう少し、と言う所で聞こえてきたのは、間違える筈のない愛娘の叫び声。
何かあったのか?!と、その場から走って駆けつけると、俺の目に更なる驚きが飛び込んでくる。
なんと紫愛が、さっき作った泥団子を葵に向かって投げていたのだ。
ーー……っ、え?
その光景が信じられなくて、俺は頭の中が一瞬真っ白になった。
紫愛はお転婆で我が儘な面もあるが、物を投げたり、人を叩いたり……いわゆる暴力的な事をするなんて、今までなかった。
そんな事をする子だなんて、俺は思ってなかったんだ。
ショック、だった。
衝撃が強すぎて、俺は、"何故、紫愛がそんな事をしたのか"、と言う理由まで……考えられなかった。
「紫愛!
ダメ!それはやっちゃダメ!やめなさい……!」
俺よりも早く、そう言って紫愛の手を掴んで止めたのは弥夜。
その光景を見て、ようやくハッと我に返った俺は力の抜けた手から地面に落ちた飲み物を気にもせずーー……。
パシンッ……!!
紫愛に駆け寄って、泥団子を投げた手を掴むと、その手を引っ叩いた。
最初のコメントを投稿しよう!