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「!っ、父さん……!」
「!っ、紫夕さん……!」
そんな俺の行動に驚いて、声を上げたのは弥夜と葵。一方の紫愛は、痛みよりも先に驚きがきた様子で目を見開いて、俺を見てた。
俺は屈んで、しっかり紫愛と目を合わせて言う。
「……謝りなさいっ」
「っ……」
俺が怒りを含んだ表情と声でそう言うと、次第に紫愛の瞳が潤み出す。
「紫愛ッ、謝りなさいっ……!」
「!っ、ふぇ……っ」
もう一度強く言うと、表情があっという間に歪んで……。紫愛は身体を揺らしながら泣き始めた。
俺は今まで、こんな風に紫愛に怒った事がなかった。
可愛くて可愛いくて。我が儘言われても、悪戯されても、それすらも可愛いと思えて大切にしてきた。
雪が居なくなってしまってからは、尚更……。雪の分まで、大切にしようと思ってた。
でも、そうやって甘やかし過ぎたのが駄目だと思った。
自分の甘やかしが、この事件を引き起こしてしまったんだ、って、思ったんだ。
「紫愛!「ごめんなさい」だろっ?」
俺はただ、"しっかりしなきゃ"。
"良い父親にならなきゃ"、って必死だった。
「っ、紫夕さん!あのねっ……」
「父さん!これには訳が……」
葵と弥夜が必死に、こうなってしまった経緯を話そうとしてくれたのに、すっかり熱くなってしまった俺は止まらない。
「ーー訳っ?!悪いのは紫愛だ!!
どんな理由であれ、人に物を投げるなんてやっちゃいけない事だろっ?!」
俺の怒鳴り声が広場に響いて、辺りは一瞬でシーンッ、と静まり返った。
でも、少しして……。
「グスッ、グスッ」と嗚咽をしながら、紫愛が言った。
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