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だから、
「紫愛ちゃん。パパが戻ってきたら、私とパパであれやってあげようか?」
そう、声を掛けた、って。
そしたら紫愛は首を横に振って、葵の事は「ままじゃない」って呟いた後に癇癪を起こして……。
「やー!!ちだーう!!」
それで、葵に向かって泥団子を投げつけたそうだ。
……。
その経緯を聞いて、俺は言葉を失った。
「私が無神経な事を、言っちゃったんです。ごめんなさい……。
紫愛ちゃんはきっと、紫夕さんと本当のお母さんに、高い高いやブランコをして欲しかったんだと思います」
「ーー……っ」
葵の話で、全てが分かる。
つまり紫愛は、葵が居たら本当の母親である雪が、もう戻って来ないと思ったのだ。
だから、雪の為に、葵を追い払おうと……。
全てが繋がる。
俺が怒った時に言っていた「違う」とは、葵の事を「ままじゃない」と言っていただけで……。
自分の事を「悪くない」と言ったのは、自分は雪の為に戦ったと言うしっかりとした意志があったから……だった。
それなのに、俺は……っ。
手を引っ叩いて、怒鳴って、紫愛を突き放すような言い方をしてしまった。
紫愛は母親想いで、人の気持ちが分からない子なんかじゃなかった。俺の方がよっぽど、子供の気持ちを分かっていなかったのだ。
「紫夕さん。
私の方は大丈夫です。だから、早く紫愛ちゃんの所へ行ってあげて下さい!」
真実を聞いて落ち込む俺に、葵は笑顔でそう言ってくれた。
でも、不器用な俺はすぐに帰っても紫愛にどう接すればいいのか分からなくて……。気持ちを整理する為にも葵を女子寮に送ってから、自宅に戻る事にした。
……
…………。
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