番外編①紫夕side(5)

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だから、 「紫愛(シア)ちゃん。パパが戻ってきたら、私とパパであれやってあげようか?」 そう、声を掛けた、って。 そしたら紫愛(シア)は首を横に振って、(あおい)の事は「ままじゃない」って呟いた後に癇癪(かんしゃく)を起こして……。 「やー!!ちだーう!!」 それで、(あおい)に向かって泥団子を投げつけたそうだ。 ……。 その経緯(いきさつ)を聞いて、俺は言葉を失った。 「私が無神経な事を、言っちゃったんです。ごめんなさい……。 紫愛(シア)ちゃんはきっと、紫夕(しゆう)さんと本当のお母さんに、高い高いやブランコをして欲しかったんだと思います」 「ーー……っ」 (あおい)の話で、全てが分かる。 つまり紫愛(シア)は、(あおい)が居たら本当の母親である(ゆき)が、もう戻って来ないと思ったのだ。 だから、(ゆき)の為に、(あおい)を追い払おうと……。 全てが繋がる。 俺が怒った時に言っていた「違う」とは、(あおい)の事を「ままじゃない」と言っていただけで……。 自分の事を「悪くない」と言ったのは、自分は(ゆき)の為に戦ったと言うしっかりとした意志があったから……だった。 それなのに、俺は……っ。 手を引っ叩いて、怒鳴って、紫愛(シア)を突き放すような言い方をしてしまった。 紫愛(シア)は母親想いで、人の気持ちが分からない子なんかじゃなかった。俺の方がよっぽど、子供(紫愛)の気持ちを分かっていなかったのだ。 「紫夕(しゆう)さん。 私の方は大丈夫です。だから、早く紫愛(シア)ちゃんの所へ行ってあげて下さい!」 真実を聞いて落ち込む俺に、(あおい)は笑顔でそう言ってくれた。 でも、不器用な俺はすぐに帰っても紫愛(シア)にどう接すればいいのか分からなくて……。気持ちを整理する為にも(あおい)を女子寮に送ってから、自宅に戻る事にした。 …… …………。
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