番外編①紫夕side(6)

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紫愛(シア)はね、きっと待ってるんだ。今も、雪さん(母さん)は何処かで生きてて……いつか、帰って来るんだ、って」 ヤバい、と思って熱い目を手で覆おうとした時にはもう遅くて、俺の目からは涙が溢れていた。 そして、気付くんだ。 (ゆき)が居なくなって、誰よりも前に進めてなくて、未練たらしくしていたのは、俺自身だ、と……。 写真や想い出の品を人目に付かないよう隠して、(ゆき)の存在を遠ざけて、現実を受け入れていなかったのは紫愛(シア)よりも自分。 誰よりも……。母親や妻と言う存在を求めて、弱っていたんだ。 紫愛(シア)はとっくに、乗り越えていたのにーー……。 情けない。頼りない。 そう思われたくなくて、(ゆき)の存在を隠す事で、見せないようにしていた。 俺は紫愛(シア)の為ではなく自分の為に、(ゆき)を封印しようとしていたんだ。 久々に流した涙は、まるでその分溜まっていたかのようになかなか止まらなくて、俺は暫く俯いていた。 すると、「ぱぁぱ?」と言う声と共に、小さな掌が俺の頭をそっと撫でる。 顔を上げると、目を覚ました紫愛(シア)が、目をぱちくりさせて俺を見ていた。 そんな紫愛(シア)の目は、泣き過ぎて赤くて……。更に左手の甲も、俺が叩いたせいで赤くなっていた。それなのに……。 「いちゃいの?」 「っ、……」 「いっちゃいのー、とんじぇけー!」 俺の頬に触れて、小さな手をバンザイするように大きく上げて、そう言ってくれた。 「っ、紫愛(シア)……!」 愛おしさが、込み上げる。 俺は紫愛(シア)を抱き寄せて、そのままぎゅーっと胸に抱いた。 「っ……ご、めん! ごめんな?……紫愛(シア)ッ」 抱き締めながら何度も何度も、俺は紫愛(シア)に謝り続けた。 何も言わずに、ぎゅっと小さな両手が俺の服を握り締めてくれて……。それが嬉しくて、暫く、俺の涙は止まらなかった。 …… …………。
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