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翌日。
俺は葵との付き合いに、正式に断りを入れた。
司令官から色々うるさく言われる事も覚悟していたが、そこは葵が上手く話してくれたようで、何とか丸く収まっていた。
それから……。
俺はもう、隠す事をやめた。
物置きにしまっていた雪関係の物を出して、写真も写真立てに入れて、俺の部屋だけではなく家の色んな場所に飾った。
そして、紫愛の前でも雪の名前を口にしたり、昔の話も、少しずつ……紫愛の成長に合わせて、話してやる事にした。
俺と出逢い、暮らし、一緒に仕事をしていた事。
その中で、互いに大切な存在だと気付いて、愛を育んでいった事。
それから……、……。
「紫愛の母ちゃんはな、綺麗な綺麗な真っ白い龍なんだ」
「どら……ごん?」
「ああ。
でもな、それは俺達家族だけの秘密なんだ」
「ひみつ?」
「ああ、内緒の話だ。
誰にも言っちゃいけない。約束出来るな?」
「……やくそくまもったら、ママにあえる?」
「ああ。きっと、いつか会える。
ーーいや、会いに行こう。この世界を、母ちゃんと暮らせる世界に変えて!」
「うんっ……!!」
「一緒に生きようと」誓い合った初デートの場所で、今度は娘と一緒に夕陽を眺めながら俺は約束した。
……
…………雪、ごめんな?
お前の事を紫愛に話さないなんて、俺には無理だった。
けどさ、もう一つの約束は死んでも守るから、許してくれ。
俺は、例え紫愛がいつか自分の血に戸惑う日が来ても……。全力で支えて、前に進める世の中を創る。約束する。
それに、そんな世の中が来たらさ?
もしかしたら、また、お前と一緒に暮らせる……そんな未来が来る気がするんだ。
なぁ、それくらい、夢見ててもいいだろ?
そう心の中で問い掛ける俺の左手の薬指には、もう二度と外す事のない三日月のシルバーリングがはまっている。
……
…………。
番外編 ①紫夕side ー終わりー
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