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僕にとって、父は憧れであり目標。
子供の頃は、将来追い越したいような、追い越したくないような……。そんな複雑な想いを抱いていた事を覚えている。
だからだった。
父と同じ研究者としての道でなく、その父の研究を支えられる隊員としての道を選んだのは……。
父は研究で、僕は隊員で。
父が人々を魔物から救うべく研究を重ね、その研究が間違いでなかった事を証明する為に、僕が現場で戦い成果を残すのだ。
だから子供時代の僕は、誰にも負けないように努力を重ねて生きてきたーー。
勉強も、運動も。
隊員候補生として、誰よりも優秀だった。
けれどある日。
僕は同期であり、幼馴染みだった男に模擬試験で負けた。
相手の男の父親は父の親友で、その縁で僕と彼も幼少期に知り合ってから互いに切磋琢磨し合った仲。
出会った当初は知識も身体能力も遥かに自分の方が上だったと言うのに……。正式に隊員になれる寸前の模擬試験で、僕は人生で初めての2番になった。
「1番も2番も関係ない。そもそもみんなそれぞれ違うのに、順位なんてつけるものでもなければ、比べるものでもない。
お前はお前なんだ。今のままでいい。なっ?風磨」
落ち込む僕に、父はそう言って微笑みながら肩を叩いてくれた。
尊敬する、大好きな父がそう言ってくれたから、僕は「そうだな」って思えた。
……それなのに。
父は、同じ研究員で、同期で、親友だった橘さんに負けて……。その地位を奪われて、自殺した。
父の亡骸を見て泣き崩れる母と妹の傍で、僕の心に浮かんだのは、
「1番も2番も関係ないんじゃなかったの?」
と言う、疑問だった。
地位を奪われてから自殺に至るまでに、かなり精神的に病んでいた父の亡骸はボロボロで……。かつて、僕が憧れた姿は見る影も無くなっていた。
そんな亡骸を見て、僕は悟った。
やっぱり、2番では駄目だ。
1番でなければならないのだ、とーー。
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