番外編②風磨side

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信じられなかった。 あんなに僕を可愛がってくれて、まるで本当の息子のように……。いや、自分の後継者のように育ててくれていた(たちばな)さんからの、そんな言葉。 何故?と言う疑問と、どうしようもない怒りの感情で一瞬我を忘れて……。僕は恐慌に出た。 けど、響夜(きょうや)君にブチのめされて、施設を追放されて……。暫く一人になって、もう一度、冷静になって考えたんだ。 (たちばな)さんが僕を見捨てる筈がない。 そうだ。これは、(たちばな)さんが僕に与えた課題!試練なんだ。 自分の元で、自分の研究を引き継ぐのではなく、 「私が教える事はもう何もない。 これからは、自分で新たな道を切り拓け」 そう、言ってくれているのではないか、と思った。 ようやく、そう思えて。 それを確かめに、僕は再び(たちばな)さんの元を訪れた。 …… …………12月の半ば頃の事だ。 少し寒い夜だったけど、何故か激しい爆発と共に燃える(たちばな)さんの研究所は暑いくらいだった。 これはきっと一つの時代が終わる日で、世界が新たに生まれ変わる日だったんだろうな。 そして新しい世界は、新たに時代を導く者を必要としている、と僕は思った。 防犯ブザーやスプリンクラーが全く作動していない研究所はすぐに火の海だったが、厳重に造られていた秘密の地下室へ続く通路と階段は無傷だった。 僕は途中で自らの魔器(マギ)風乱(ふうらん)ーを回収すると、ゆっくりと階段を降り、秘密の地下室へ。 「……お久し振りです、(たちばな)さん」 扉を開け、壁にもたれ掛かるようにして倒れていた(たちばな)さんに微笑みかけると、僕は歩み寄ってその身体をギュッと抱き締めた。 鋭い刃物で胸を貫かれ、大量の血を流したその身体がもう命の秒針を刻んでいる筈もなく、返事はなかった。 でも、死に顔を見れば最期まで(たちばな)さんが自らの生き方を全うして逝った事が分かる。そして……。 ああ、やっぱり……。 この世界は新たに導く者を必要としている。 (たちばな)さんは、僕をその後継者に選んでくれたんだ!! 僕は(たちばな)さんをそっと寝かせると、地下室にある机の上からアタッシュケースを手に取って胸に抱く。
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