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さっきまでの暗い気持ちとか。何とか作り笑いしようとしてた誤魔化しの気持ちとか、全部全部吹き飛んで思考が停止して……。ただ、目の前の雪を見つめてしまっていた。
「どう?雪ちゃん可愛すぎでしょっ?髪もサラサラで、肌もほんっとに白くて!
こんなに綺麗いで可愛い子、アタシ初めて見たわぁ~!」
マリィのその言葉を、否定や訂正など俺には微塵も出来ない。
何でだ?
ただ風呂に入って、あのボロボロだった服から入院服に着替えただけだろーー……?
そう、それだけ。それだけ、なのに俺の瞳には目の前の雪が、今まで見た誰よりも……。いや、この世の何よりも綺麗に映った。
思わず手を伸ばして、導かれるように、そっと髪に触れてみる。頭を撫でてやるようにすれば、サラサラなんて言葉じゃ足りない程で……。ずっと触っていたいと思ってしまう。
横髪を撫でた際に自然と親指が頬に触れれば、その僅かな感触に"もう少し触れたい"と素直な気持ちが溢れて、俺は雪の頬に手の平を当てた。
すると、ずっと伏し目がちに俯いていた雪が顔を上げて、瞳が重なる。
っ、……ッ~~~?!
薄水色の瞳に魅せられて、ドキンッと胸が弾めば時が動く。
俺は、何やってーー……。
パッと手を離すと長椅子から立ち上がり、熱が高まった顔を隠すようにして頭を掻くと、俺は誤魔化すようにマリィに話し掛けた。
「っ……で?検査の結果とか、今後どうなるのかの予定はもう出たのか?」
どんなに可愛くても、綺麗でも、相手は男だ。
いや、そもそも子供相手にドキドキさせられるなんてヤバいだろーー。
瞳が重なった瞬間、確かに自分の中に湧き上がった感情を俺は気の迷いだと否定して封じた。
心の中の動揺を必死に抑えていると、そんな俺にマリィは落ち着いた口調で言う。
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