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「それは……後で話すわ。
とりあえず、雪ちゃんを病室に連れて行って担当してくれる医師と看護師に引き継ぎしなきゃ」
ここからは救護班の自分ではなく医療班の担当になるから、と、マリィは俺に微笑って……。一緒に雪を病室に連れて行くと、担当の医師達に引き継ぎを済ませた。
そしてその後。
俺とマリィは休憩所で二人きりで話す事になった。俺が保護施設での院長先生との事を話すと、自販機で買った紅茶を一口飲んだマリィが言う。
「……そう。やっぱり紫夕ちゃんじゃ雪ちゃんを引き取るのは難しそうなのね?」
「っ、やっぱり、って……お前察してやがったな?」
「まぁ、ね。担当ではないけど、孤児達の様子や面倒をみる機会がたまにあるし、それくらいの規則はーー……って!紫夕ちゃん!貴方やっぱりまだ煙草吸ってるのねっ?」
「ああっ?別にいいだろ?今は任務中じゃねぇんだから。
休憩は休憩!そん時くらい好きにさせてくれよ~」
話をしながらマリィの横でタバコを吸い始めると、めちゃくちゃ嫌な表情で煙や臭いを振り払うかのように手をパタパタされて、俺も思わずムッとする。
すると、そんな俺の態度を見たマリィは怖い顔で溜め息を吐いて、透明なファイルに入った何枚かの紙を差し出して来た。
「そんなんで「雪ちゃんを引き取りたい」、なんてよく言えたものよね!」
「あ?何怒ってんだよ?タバコとその事はなんも関係ねぇだろ?」
コイツ、何キレてんだよ?
マリィと言い、杏華と言い、女ってホントにタバコ嫌がるよな~。
マリィの態度は、さっき雪が一緒に居た時とはまるで違ってトゲトゲしい。
たいした娯楽も無く任務に明け暮れる日々。そんな毎日の中で数少ない楽しみを指摘された俺は「やれやれ」と心の中で溜め息を吐いて、この時は別にマリィの言葉を大して重く受け止めずに居た。
短くなったタバコを携帯灰皿に押し付けて消すと、受け取ったファイルから紙を取り出して内容に目を通す。
それは、今日の段階で分かった雪の状態についてだった。
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