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forget me not
伝説の言い伝え。花には妖精が宿って、願いを叶えてくれるという。ただし、約束が2つ。
1、願いが叶う前までは妖精たちの記憶があるので、他人に言ってしまわないこと。
2、他人の不幸を願わないこと。
人々の願いを叶えていた妖精は悪いことに使われるようになっていった。そのため、妖精たちは身を守るために、現れるのは強い願いを持った選ばれた人の前だけになった。
◇
桜の木々がアーチを作っている中をくぐるとさくらの通う学校が見えてくる。両手で握っている傘に雨が当たり流れ落ちた。
(雨の日は頭痛いなぁ。痛み止め飲んでくればよかった……)
さくらは頭を抑える。雨の日はいつも決まって頭が痛いのだ。
雨はザーザーではなく、しとしとと降っている。授業が始まるまであと30分あった。
さくらは特別何か用事があるわけではないが、今日は早く学校に着きたい気分だった。
この学校には、さくらは高校から通い始めた。中高一貫校の為、 クラスの中でのグループは中学の時から出来上がっていた。その中に高校から入った自分が入れるはずがない。さくらはそう思っていた。簡単に言うと諦めていたのである。
この学校に通って今年で2年目。 さくらはまだ1人だった。
まだ朝早すぎるためか、教室には誰もいなかった。1番窓側、後ろから2番目の席。窓からは校庭が見える位置で、晴れていれば満開の桜が見えるはずだ。ちなみに今日は雨なので桜の花びらが地面に落ち、水たまりの上で花筏をつくっていた。
さくらは自分と同じ名前の『桜』が嫌いだった。自分とは違って華やかに咲き誇る桜が。それは羨ましいと思う心からなのかもしれないが、さくらは気づいていない。
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