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『さくら、さくら。もう授業終わった?お昼?誰かと一緒に食べるの?』
長い長い午前中が終わり、さくらが鞄に教科書を入れているときミーは再びやってきた。
「誰とも一緒に食べないわよ。自分の席で気配を消して食べるのよ。……ミーはご飯あるの?」
『私たちは人間の食物食べないわよ。食べるとしたら花の蜜かしら。あれ、意外といけるのよ』
ミーは飛んで勿忘草の元へ行く。さくらはそれをしばらく眺めて、お弁当を取り出した。
教室から出て行って人のいないところで食べるという手もある。しかしほとんどが教室から出て行ってしまうので、逆に教室のほうが人が少ない。今日も教室には三人だけだった。
『ねー。さくらも食べる?』
(そこで聞かれても私は叫べないじゃないの。ここでいらないって言っても、いるって言っても変な人には違いないわ)
さくらはミーの言葉を無視する。
黙々とお昼を食べていると、教室のドアがガラガラと音を立てて開いた。
「……あれ?人が少ない」
そこを入ってきたのはさくらの後ろの席の男子だった。彼はそう言うと、自分の席まで来て荷物を置く。
「えっと……尾上さん?なんで教室三人しかいないの?」
急に話しかけられびっくりしたさくらは言葉につまりながら答えた。
「あ……えっと……いつも、お昼の時間はこんな感じです。たぶん、皆、広場のあたりに、いると思います……」
それを聞いた彼はありがとうと言って、教室を出ていく。ミーがさくらの前に出てきた。
『さくら、大丈夫?私と話すときと全然違うじゃない』
今度はミーが近くにいたのでさくらは答えることが出来た。
「あなたは妖精だからよ。クラスの人とは全然喋らないし、特に男子なんて!」
『ふーん……』
ミーはまた、花の方へ飛んでいった。
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