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第一章 月森の杜
洋麺屋 陽洋の昼下がり。
いつもならば賄い料理を食べている時間なのだが、今日は店を貸切りにして、ランチの予約が入っていた。
「水瀬君、こっちにサンドイッチをお願い!」
「はい!」
「それとノンカフェインのコーヒーもお願い!」
「はい!」
予約したのは、吉見が働いている美容室で、宴会をしても飲めないメンバーが多かったので、ランチにしたらしい。
「水瀬君、お水の土産もお願い!」
「はい!」
テキパキと指示しているのは吉見で、陽子が笑って手伝っていた。
「佳樹ちゃんも、しっかり者のお嫁さんを見つけたものね」
「吉見さんとは、そういう感じではありません」
そもそも、何故、吉見が張り切っているのかというと、来ているメンバーに美人が多いのだ。そして吉見は美人が好きだ。
「少しは意識して貰えているでしょう?」
「微塵も意識して貰えません」
とにかく、吉見が意識するのは美人だけだ。しかし、ただ美しいというのではなく、自分の美を磨いている人が良いという面はある。
そして、吉見が働いている美容室は、見習いからベテランまで、全員が美人であった。それも、それぞれが、自分の見せどころを熟知しているという感じもある。
これは、夜の商売の面々とは異なる美人で、どちらかというと、女性から見ても美人の部類かもしれない。
媚を売る美ではなく、凛とした強さを持った美しさだ。男は引くかもしれないが、俺も憧れてしまう。
そして、その美人達が、塩家を見て溜息をついていた。
「……立ち居振る舞いも、美しいのよね………………」
「ミステリアスな部分も、美しい感じ…………」
「影があって、そこであの笑顔…………美しい」
どうも、陽洋では塩家の鑑賞会も行われていたらしい。
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