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しかし、電話が繋がっただけでも奇跡だろう。
俺の推測が当たっているのならば、塩家がいるのは黒澤の界だ。
「竜、水で電波を辿る。細く糸のように繋なげていって。途切れさせない、凄技で!」
「了解」
無線がダメならば、有線にすればいい。そして、水は界を渡るのだ。
「塩家!!」
『ゲ、水が来た!!』
すると、塩家の声が聞こえてきた。
「塩家、どこにいる??」
『分かっているから、水を飛ばしたのだろう!しかし、こんな方法があるのか…………糸電話???』
糸ではなく水だ。
しかし俺も、水で通信できるとは思っていなかったが、やってみるものだ。
「それで、塩家…………何がどうなった???」
どうして、塩家が異界にいるのか、そして何故、黒澤の界にいるのか、状況が掴めない。すると、塩家も困ったように笑っていた。
『ははははは、困った。まず、そっちに、何人か帰っただろう?』
「帰ってきている………………」
塩家は、吸収している核を、人間に戻す方法を見つけたのだろうか。
『俺の仕事場に黒澤さんが来た。山ほど、チケットを購入してくれて、美容関係のスタッフや関係者に配ってくれた……そこにはテレビ関係者もいた……しかも、楽屋に巨大な生の花が届いた』
「ああ、無下に出来なかったわけね」
塩家は、最初の出来事を教えてくれた。
『黒澤さんは、造った自分の界に引き籠るつもりだから、挨拶に来たと言った』
黒澤は、自分の界に、ある程度のものは運び終えたと言ったらしい。食糧も、生き物以外ならば移動が可能で、数十年分は運んでいるという。
そして、協力者のお陰で植物の種も移動する事ができたので、向こうの界で農園生活をおくるのだと言った。
『黒澤さんは、自分が異界に行くと、この界の住人から記憶が消えてゆくので、きっと、次に会う事はないだろう…………思い出す事も出来なくなると言った』
そうして、後が無いと強調してから、黒澤は塩家にひとつの事を伝えた。
『黒澤さんは、不可説という竜と取引をした。黒澤さんが依頼したのは、自分の界に生命を運ぶ事。不可説は、その方法は竜だと言った』
その竜ならば、生命竜である大知と取引していると伝えると、ならば良かったと不可説は言った。
『不可説は、界の狭間で身体を拾った。それは魂の無い人間だったので、黒澤さんの界に運べる。そして、魂を入れれば、生き物として復活できる』
「…………………………もしかして………………」
すると、塩家は無言になっていたが、頷いている感じがした。
『俺の中にある魂。その肉体は、多くが狭間に落ちて、漂っていた』
そして、全てでは無かったが、多くの肉体を不可説が拾っていた。
「…………魂を返す為に、塩家がそっちに行っているのか……………………」
『俺は人間なので移動できなかった。でも、不可説が短時間ならば、竜の体を貸すと言った』
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