第十九章 夜と死は 四

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 その短時間というのが問題で、数日くらいだという。それ以上異界にいると、塩家の存在が消えてしまうらしい。 「魂を肉体に移動出来たのか…………」 『それが一体戻すのに、半日くらいかかった…………』  一旦離れてしまった魂は、中々定着できなかったという。  そして、魂を人間に戻すと、今度は生命竜である大知が、命を吹き込んだ。そして、この界に来ている竜の子孫と入れ替えた。 「不可説の狙いは、何だ?」 『多分、生命竜が欲しいのだと思う』  生命竜は、竜王であり最強の竜だ。肉体を運べる不可説、そして命を司る生命竜がいれば、界を渡らせる事が容易になる。 「生命竜か…………」 『まあ多分だけど、それと核竜も欲しいのだろうな…………でも、今はまだ早いと言っていた』  まだ早いという次に、小さすぎて不安定だとか、育ちが遅すぎるなども言っていたらしい。だから、核竜は俺で間違いないという。 「……小さ過ぎ……………………俺?」  だが、今、塩家が核竜を必要としていた。 『水瀬!頼む!俺は、この魂を人に戻したい!!核竜と黄金竜ならば、きっと魂を移動させ、更に定着できる!』 「…………………………」  塩家の気持ちは良く分かる。  塩家の中に在る無数の魂も、人間に戻りたいと思っているだろう。 「…………全ては不可説の計算通りなのかもしれません」  話を聞いていた月森は、不可説は未来を見て、改竄を重ねる竜なのだと言った。 「不可説にはついては、何も分からないのではないのですか?」 「分かりません。だから、これは私の推測でしかありません」  しかし、俺もそんな感じがしている。  俺の両親や祖父母が消え、そして俺は塩家と出会う。そして、塩家の事件も含めて、どこか意図的な繋がりを感じる。 「水瀬君はこの界の竜王です。安易に界を出てはいけません」 「え、俺は、母親に相談するために、竜界に行って来ようと思っていました」  すると、竜界は別だと月森が溜息をついていた。  俺の竜界での母親、天竜はかなりの物知りで、博識であった。それに、生まれてから一度も挨拶に行っていない。天竜は母親であるが、まだ会った事がないのだ。
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