第十九章 夜と死は 四

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 そして、俺は自分が安定したら、一度、母親と話しをしたいと思っていた。  塩家との通信は繋げたまま、俺は水を辿って界を渡れないかと検討してしまった。すると、俺が宝珠になり、竜に納まった状態ならば、どうにか行けそうな感じがしてきた。  すると、俺の行動を予測した月森も、メンバーを集めていた。 「いいですか。竜は、まとまって移動したほうが、より安全で確実な渡りになるのです。まあ、個体での移動を好みますが……それはそれ。冒険よりも確実を選んでください」  そして、月森のメンバーも一緒に黒澤の界に行くと言い出した。 「同行します!でも、留まりません。短時間で用事を済ませてください」  しかし月森は、黒澤の界に留まらないという。その理由は、やはり黒澤の界は安定していないので、竜が渡る界には適していないうえに、存在で余計にバランスを崩すかららしい。 「そういう面では、生命竜である竜王様は凄いのです」  どう凄いのかといえば、生命竜はかつて一万といわれる同胞を連れて界を渡ったからだ。 「その数ならば安定して渡れる。そして、竜王様は定着させた」  しかし今は、考えているよりも行動するしかない。塩家にも、俺にも時間制限があるのだ。 「では、月森さん、出発します」  その前に、陽洋に連絡しておこう。  もしかすると、今日中には帰って来られないかもしれないので、安在さんにヘルプを頼み、洋平には正直に、塩家が誘拐されているので助けに行くと伝えた。すると、洋平は驚きもせずに、分かった、頑張って来いと応援してくれた。 「…………分かっているのかな?」  警察に連絡しろと言わない時点で、何か理解しているのかもしれない。 「それでは、急いで弁当を作ります!何人前がいいかな…………」  腹が減ると困るので、二十人前くらい欲しい感じがする。 「…………弁当ですか」  俺は、材料を分けて貰うと、弁当を作り始めた。すると、微妙な表情で、月森が俺を見ていた。 「…………何というのか、この界の食事が充実している理由が分かった気がしますよ」 「美味しい事は幸せです」  そもそも、生きてゆく上で、美味しいは不必要だ。毒や腐っていないのならば、何でも食べるべきだ。しかし、俺は美味しく、更に健康な食事がしたい。 「幸せで、魂は喜び、生命は輝きます。生きてゆくという事は、ただ心臓が動いているだけではないのです」  そもそも、物語も不必要だ。文字は記録だけでもいい。  しかし、人は物語を欲する。会話を楽しむ。 「核竜だね…………これは、竜界に残しておきたかっただろうな…………」  しかし、俺は竜界で生まれる事が出来なかった。
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