第十九章 夜と死は 四

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「竜、嵐竜は呼べるか?」 「無理でしょう。今、竜界に戻っていますから…………」  すると、俺と竜しか、この界の住人はいない。  そして月森のメンバーがやって来ると、俺を見て溜息をついていた。 「核竜ですね……」 「核竜…………………………」  どうして核竜で溜息が出るのだろう。しかし、その中でも岸上は、特に盛大な溜息を付いていた。 「岸上は、店で待機」 「分かっていますよ」  岸上は竜界の生まれではない。そして、生命竜の子孫にあたっているようだ。 「月森さん、向こうの界に生命が出来たら、入れ替わりで行ってもいいですね?」 「それは、竜王様に相談するといい」  しかし、界を渡る怖さを、岸上も承知している。  岸上は俺をじっと見つめると、握手してからハグしてきた。そして、俺の背を叩くと、首や頭に何度もキスしていた。 「…………核竜は、何というのか心に響く。このまま、抱き締めていたい…………」  だが、月森は俺を岸上から離すと、間に津軽を置いた。津軽はしっかり壁になると、俺を守っているようだ。 「行きますよ」 「分かりました」  俺は黄金竜を宝珠として持ったまま、自分の姿を宝珠に変えた。そして、竜の手に飛び乗った。 「二重宝珠…………」 「しかも、核竜と黄金竜………………」  宝珠になってみると、内側から光っていた。それは、黄金竜の輝きだろう。 「物凄く、綺麗だ………………渦巻くオーロラと、無数の光の粒。魂そのものが形になったようだ」 「これは、竜界でも宝珠です。世界を懸けてでも、欲しいものの一つです」  月森も竜の姿になると、壁を尻尾で叩いていた。すると、そこは暗黒の空間に変わり、際限無く奥に続いていた。 「竜、塩家に続く水を辿る!」 「了解」  宝珠になると、竜の動きや感触が良く分かる。そして、壁に出現した暗黒空間に入ると、とても寒いと分かった。竜は俺が冷えないように、手でしっかりと握ってくれるが、それでもとても寒い。  俺が宝珠のまま震えていると、竜は体内に取り込んでくれた。しかし、体内に取り込まれると、外の様子が分かり難くなり、竜以外と会話も出来なくなる。 「竜、外に出していいよ」 「暫し、入っていたほうがいい」
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