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第二十章 夜と死は 五
光の中に入ってみると、そこには小さな宇宙が在った。そして、その中の地球に似た惑星に降り立ってみると、大気の存在を確認した。
「界は宇宙旅行に似ている???」
「多分、黒澤さんが、そうイメージして作ったからでしょう」
月森のメンバーも、無事に地上に降り立っていた。そして、俺は竜の中から出ると、人間の姿に戻った。
「塩家は?」
しかし、この界は小さい。
地上部分には、平地に家が数件存在しているだけだった。
「塩家!!」
そして、その平地に、幾人もの人型が横たわっていた。
「何体ある?」
「興味がそっちに移った???塩家さんは、いいの?」
平地に並べられた人型が、数メートル間隔に並べられて、かなり長く続いていた。そして、それが、二十列ほどあった。
塩家が取り込んでしまった人間は、正確な人数を把握していないが、こんなに多かったのだろうか。
一体を覗き込んでみると、眠っているようにも見えるが、魂が入っていなかった。
「空の肉体…………」
だが、魂は入っていないが、死んでいるわけではない。
「おおい、水瀬!!こっちだ!」
塩家の声が聞こえたので、姿を探してみると、建物の付近に人影があった。そして、大きく手を振っていた。
「塩家??」
しかし、人影に近付いて見ると、塩家では無かった。
「誰?」
「だから、竜の身体を借りていると言っただろ!」
それは若い男性であるが、ボディビルダーのような体をしていた。そして、浅黒く日焼けしていて、ズボンにビーチサンダルのシンプルな姿だった。
「塩家???」
どんな竜が変身したら、この姿になるのだろう。
「そうだ。それで、時間がない」
塩家だと思ってみても、凄い筋肉を見ると、どうも別人だと思ってしまう。それは太腿の筋肉だけで、俺のウエストほどもあるのだ。
「水瀬…………時間がない」
「わかった」
でも、状況は理解した。
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