第一章 月森の杜

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「水瀬君。料理も同じだと思わない?サラダでもいいけれど、ディナーのメインにはならない」  サラダは前菜で、やはりディナーではメインが重要だ。 「!!俺に欠けているモノを、教えてくれていたのですか!」 「いや、違うけれど」  陽洋に来たのは、あくまでランチが美味しいからだという。そして、生の塩家を鑑賞しに来たらしい。 「水瀬君も、鑑賞用には違いないけれど、何というのかな…………華かな。不足しているのは…………」 「地味ですか…………」  でも、俺に欠けている部分が分かってきた。 「それと、感動」 「恐れ入ります」  吉見は、俺に賢明に伝えようとしてくれて、とても嬉しい。それに、この女性達の美しさを見ると、参考になる。  それぞれに、違った魅力があり、それは比較するものではないのだ。 「でも、サラダと水は、抜群に美味しい」 「そうですね。こんなに美味しい野菜は、他にはありません!」 「ここに来てまで食べたい味」  そこがポイントで、店に来て食べたい味に料理を育ててゆく事が重要らしい。そして、それは、接客業だからこそ分かる良さだという。 「自然に美味しいので、それが特別なのだと分かっていない。それは、水瀬君と似ている」 「いい見た目なのに、素朴なのよね……」 「見ていて、少し悔しい。分かってやってと、お姉さん気分になる」  何だかんだ言っても、吉見の同僚は優しい。褒めて伸ばすという事も、熟知している。  だが一人が時計を見ると、全員が食事を終わらせた。 「ランチ、ご馳走様。お水も、ありがとう」 「はい」  吉見の同僚たちが、水を持って立つと、午後も頑張るかと笑っていた。貸切りにしてランチにしたのは、予約が夜まで続いているかららしい。  そう分かると、ここでしっかり休息して、午後も頑張って欲しいと思う。 「行ってらっしゃい!」 「!!!ムム。又来ます」 「ありがとうございましたではなく、行ってらっしゃいときたか…………」 「可愛い」  吉見の同僚は、反応がいい。
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