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いよいよ結婚へ
それだけの業務をこなすと、シルビア王女はようやく結婚への重い腰を上げた。
もちろんお相手はローレルだ。
ゴールドプルシアン国の若者らしく、サラサラの金髪を首の後ろで結び、スラリと背の高いローレルは、いかにもシルビア王女とお似合いであった。
しかし、幼馴染でもあるシルビア王女との結婚を最初は身分違いだと遠慮していた。だが、何より王女の父母であるゴールド7世と元王妃様に是非にと勧められ、ようやく結婚する勇気がでた。
シルビア王女はその時すでに30歳。一国の王女としてはかなり遅いご結婚になる。しかし、王女の美しさは、アルビノの人の助けになると言う大きな仕事を終わらせたことでますます輝きを増していた。
お城は結婚に向けて大忙し。
そして、何よりゴールドプルシアン国の名産物である織物で王女様の結婚式のドレスを縫う係が大忙しだった。
王女様は大層すらりとなさって、ウエストなどローレルの両手で回ってしまうほどほっそりとしていた。
しかし、女性らしい体系であることには間違いもなく、王女の為に特別に濃い金髪を持っているものの髪を集め、そこに少し白っぽくなってきた父のゴールド7世と母の髪を織り込んで大変綺麗に輝くドレスを織り上げた。
ヴェールもおなじ生地で作り、シルビア王女の美しい髪を複雑に結い上げ、そこから豊かにヴェールを垂らした。
ドレスは生地の特性で、シルビア王女の美しい体のラインに沿ってスルッと足元まで落ちて行った。
いよいよ結婚式が開かれた。
初日は国民の為の結婚式を開いた。何よりも国民がシルビア王女を慕い、アルビノである王女を疎むことなく国政に協力してくれたからこその今日があるのだ。
シルビア王女は今後も国の為に力を尽くすことを国民の前で誓い、その後、ローレルと、結婚の宣誓をした。
サラサラとする織物のヴェールを挙げ、ローレルが王女様に口づけすると国民は心からの万歳を送り、誰からともなく国歌を斉唱し始めた。
翌日には関係各国の王や重鎮が結婚式に招かれ、世にも美しい王女と、身分違いのローレルとの結婚式を面白半分で見に来た国の方もいたが、ローレルがいかにも立派な若者だったので、考えを改めた。
シルビア王女の活躍はこの結婚式でも止まらなかった。
シルビア王女はマルーンの精製したオイルを結婚式の引き出物として各国の王様や重鎮にプレゼントした。
髪を洗う事もできるし、普段のお肌のお手入れにも大変役に立つことをのべた。ただ、髪を洗っても元の髪質が違うので、ゴールドプルシアン国の国民のようにはならないことは言い添えた。
結婚式後には、髪を使った織物の他にマルーンの精製オイルも輸出の要となっていった。
シルビア王女の活躍はとどまるところを知らず、国はどんどんと繁栄していった。
ローレルとの間に生まれた王女様は、幸いにもアルビノの遺伝子は継がれなかった。たとえアルビノでも愛する覚悟はできてはいたが、やはりシルビア王女の中では色々なご苦労があったのだろう。
「普通が一番よ。」
と、お母様のシルバーゴールドの髪や白い肌をうらやましがる可愛い王女にシルビア女王は優しく言うのだった。
ゴールドプルシアン国にこれからも幸あらん事を祈り、シルビアという数奇な運命を持った女性のお話を終わることにしよう。
【了】
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